エルダー2021年3月号
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2021.310待は下がり、残業や転勤はもうしなくてもよいといった制約的な働き方をしています。一方、処遇の面では、定年到達時の賃金を一律に下げて、その後はそのままにして、働きぶりを評価しないというような賃金設定をしている企業が少なくありません。どんなにがんばっても賃金は同じ、働きぶりをみる前に定年到達時から一律に賃金を下げるというのは、もはや賃金とはいえないと思います。人事制度というものは、社員に対するメッセージの一つです。このような処遇は、「高齢者には成果を期待しない」、「定年前並みの活躍を期待しない」といったメッセージを発している人事制度ということになります。働くことを期待しないのは、雇用とはいいません。私は「福祉的雇用」と呼んでいます。当然ながら、こうした制度の適用を受ける高齢社員はやる気を持つことはできないでしょう。こうした社員が千人中1人や2人ならよいでしょう。しかし、社員の5人に1人が高齢社員ですから、千人の企業であれば200人です。その人たちがみんなやる気をなくしたら、経営はたいへんなことになるでしょう。ですから、この5人に1人の高齢社員をしっかりと戦力化するということが企業経営にとって重要になっているのです。「再雇用」は雇用契約の「再締結」では、高齢社員を戦力化する人事管理をどう構築するのか。「定年+再雇用」を前提に、まずは高齢社員の活用についてお話しします。定年後の「再雇用」は、定年を契機にした雇用契約の「再締結」ということです。このとき、企業は「高齢社員から何を買うのか」、高齢社員は「会社に何を売るのか」を明確にして、それらに基づくニーズのすり合わせを通して活用の仕方を決めることが必要となります。例えば、「わが社ではいまこういう業務をしているからそれを満たす人材がほしい。高齢社員のなかにそうした人材はいるだろうか」といった姿勢で、企業は人材を探し、高齢社員と雇用の再締結をする。これは、高齢社員のために仕事をつくる「供給サイド型」の施策ではなく、労働サービスを必要とする側から、高齢社員の活用を考える「需要サイド型」の施策です。こういう心構えで雇用契約を再締結しないと、先ほど述べた「福祉的雇用」になってしまいます。高齢社員も、やはり必要とされる場で働くということがとても重要であり、こうした活用施策が基本的な考え方として大事になります。処遇については、高齢社員は短期雇用型の特性に対応する「仕事ベースの賃金」が合理的な選択です。仕事の重要度に見合った賃金設定にするということです。また、高齢社員の場合は残業も転勤もしないという制約社員として、その分賃金を調整する。つまり、短期雇用型で制約社員というタイプに合わせた処遇制度を設計していくことにより、合理性がある処遇が決まるといえます。ただ、このような合理性のある賃金制度を設

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