エルダー2021年3月号
14/68

2021.312当社は、創業者である川崎正しょう蔵ぞうが船造りを始めたことからスタートし、1896(明治29)年の設立から124年※1となります。現在は大きく分けて、航空宇宙、エネルギー・環境プラント、精密機械・ロボット、船舶海洋、車両、モーターサイクル&エンジンの六つの事業を展開しています。従業員数は、単体で約1万7千人。うち、管理職が約4千人となっています。当社では2004(平成16)年の早い段階で、一般従業員の定年を60歳から63歳へ段階的に引き上げ、63歳以降は65歳までの再雇用制度を設けました。以降徐々に一般従業員の高齢者層の賃金水準の改善に取り組み、2019年4月に、一般従業員の定年を65歳に延長しました。そして2021(令和3)年4月には、一般従業員の処遇制度を新たに見直す予定です。年齢給の廃止や評価制度の見直しといった大きな改定です。また、管理職の定年年齢を現在の60歳から65歳へ延長することも検討しています。人事制度全般を見直すなかで定年延長や賃金設定を行う2004年の早い段階で当社が定年延長にふみ切った背景には、いくつかの事情がありました。一つは、いわゆる団塊世代の大量定年退職により、社内の労働力が大きく減っていくことが目に見えている一方で、大型プロジェクトの受注が決まり、高度な技量を要する多種類の職種が必要であり、高齢者の活用を考えざるを得ないという状況がありました。昭和50年代後半〜60年代の造船不況時に採用を絞ったことから、35〜45歳くらいの層が極端に少なくなっていました。このことから採用というのは、どんなに不景気でもやり続けないといけないと、身に沁みて感じています。また、60代前半層の雇用義務化といった雇用環境の変化もあるなか、単に高齢層のところだけを改革するのではなく、人事制度全般の見直しによる労務費の変動費化に着手するなかで、定年延長を行いました。継続雇用ではなく定年延長としたのは、正規従業員としての雇用によるモラルアップ、各種人事制度改定の代償措置としての位置づけや、1999年から労働組合と定年延長の検討をしていたこと、さらに、退職給付債務(勤務費用)の軽減といった理由からでした。そして、人事制度全般について七つの項目の見直しを行いました。基本的には労務費を変動費化させるということで、成果主義、実費主義、自助努力といったものを強める制度にしました。従業員としては、がんばらないと賃金が上がりませんし、当初は社内に不安の声が上がりました。そうしたなかで、定年延長にふみ切ったわけです。定年延長に関連する取組みで実際に行ったのは、定期昇給制度の見直し、高齢・高職給化した昇給原資の適正化、青天井の昇給制度からレンジ(職能資格ごとの上限)のある昇給制度への変更、加点主義の導入でした。企業事例発表❶大阪65歳への雇用延長の取組み労働条件の見直しなどについて川崎重工業株式会社 人事本部 労政部 労政企画課課長 川かわ内ち寿とし夫お※1 本シンポジウム開催時(2020年11月12日)

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る