エルダー2021年3月号
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特集高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度を考えるエルダー13退職金制度は、管理職はDC制度(確定拠出年金制度)を導入しました。退職金の一部を前払いしてPBO※2のオフバランス化を図るものです。また、キャッシュ・バランス・プランの導入、死亡退職金の年金化、60歳到達時点での退職金の一部前払いの実施を行うことにしました。年齢にかかわらず成果を重視新人事制度を協議中当初の63歳への定年延長は、2年に1歳ずつ延ばしていき、2009年に63歳となりました。2019年4月には、さらに65歳まで定年を延長し、基本的に再雇用制度はなくなる方向となっています。定年延長を導入した当初の賃金は、60歳到達時点の5〜6割程度に設定し、毎年の査定昇給を実施しました。賞与は60歳未満と同算式で計算。退職金は毎月5千円増額。福利厚生は従来と同じとしました。定年延長にともなう退職金の一部前払いとして、60歳到達時点で本人の希望・選択により、300万円以内の任意の金額を受取り可能としました。ただし、これは退職金にはなりませんので、一時所得として課税されます。希望者は非常に少なかったです。一方で、賃金減額に対する不満はとても大きなものでした。そのため、高齢社員活用ニーズの高まりや分社化した会社の再統合などを背景に、高齢社員の労働条件の改善に取り組み、それまで58歳時に給与が減額されていたことを改善するとともにLS手当※3を60歳以降も支給することとし、賃金水準を改善。現在は、60歳以降緩やかに減額し、64歳で7割ほどになります。また、意識づけとして、55歳に到達した幹部職員を対象にしたキャリアセミナーを1泊2日で行い、いままでの会社人生の棚卸しと今後の会社人生の目標設定と老後の生活設計を行う機会としています。55歳に到達した一般従業員には気づきセミナーとして、会社制度の説明と老後の生活資金の説明などを3時間ほどで行っています。現在の年齢構成は、従来に比べればいびつさが改善されました。そうしたなか、技能伝承のため、伝承すべき技能を持ち、後進育成の資質を有する56歳以上の社員を「範はん師し」として認定する「範師制度」を導入しました。任期は1年。技能伝承奨励金を支給します。現在、全社で約30人が活躍中です。また、2021年4月からの実施に向けて、新人事制度を協議しています。協議している項目の一つは、職能資格制度です。同じ仕事でなんとなく報酬が上がっていく仕組みではなく、幹部職員については役割等級制度を再構築し、一般従業員も大きな括くくりのコース管理を導入しブロードバンド化を目ざしています。肝は、評価制度の改定です。現在は相対評価で運用していますが、絶対評価を導入し、結果をフィードバックして賞与に反映する、これを進めていきたいと思っています。年齢を極力排除した制度にして、いわゆる昇進・昇給の停止年齢の廃止を検討中です。給与体系については、管理職は年俸制から月給制へ、一般従業員はLS手当を廃止し、成果と職責により報酬が上がる仕組みにし、退職金も勤続要素から成果加算への組み替えや、PBOの圧縮も検討しています。また、管理職も一般従業員と同じような考え方で、65歳への定年延長を検討しています。※2 PBO……Projected Benefit Obligation(退職給付債務)のこと※3 LS手当……ライフステージ手当。18歳から65歳まで設定している年齢給のこと定年制度 ● 一般従業員は2004年に60歳から63歳へ、2019年に65歳へ延長 ● 管理職は、定年60歳、その後は上限5年の再雇用制度があるが、65歳へ定年延長を協議中高齢社員の労働条件を改善 ● 2011年度に賃金水準などを改善55歳到達者に対する研修 ● 幹部職員対象キャリアセミナー ● 一般従業員対象気づきセミナー範師制度 ● 56歳以上の社員を「範師」として認定 ● 伝承すべき技能を後進に指導する高齢社員の戦力化に向けて

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