エルダー2021年3月号
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2021.316今野 両社の事例発表では、定年延長にともなう処遇や評価制度の改定についてお話がありました。まずは、この点からお聞きしたいと思います。一番ヶ瀬 当社の場合、部長と課長、支社長と次長など管理職の年次が逆転する事例も多く、いわゆる成果主義型の人事制度が徹底されています。一方で、少数精鋭であり、一度降職をしても再度成果をあげれば、何度でも上位職に登用されるチャンスがあります。こうした年齢によらない成果に応じた人事運用が徹底されていることが成功の一番の要因であると認識しています。川内 当社も2021(令和3)年4月から、年齢という要素を排除するという仕組みに変えていく方向で新制度を検討しています。年功で昇格せず、基本的に能力と役割を見て処遇を決めていくという内容で、全世代に対して、同じ考えで進めていきたいと考えています。今野 考えてみればあたり前のことですが、成果に見合った給料で、年齢にかかわりなく働いてもらう、ということなんですね。川内 はい、まさにそういうことです。一番ヶ瀬 おっしゃる通りだと思います。今野 すると、制度をそこまでどう持っていくか、ということが重要になってくるのでしょう。 これから定年延長を考えている会社に向けて、これだけはいっておきたい、ということをお聞かせください。川内 定年延長にだけ取り組むのではなく、「トータルの人事処遇制度を見直すなかで定年延長もやっていく」、という取組みがよいのではないかと思っています。また、定年延長はコストアップにつながる施策であるという認識で躊ちゅう躇ちょされる会社もおありかと思いますが、トータルパッケージとして考え、従業員に強いメッセージとして伝えていくことも大事なことではないかと思います。一番ヶ瀬 当社では経営トップの「人件費はコストではなく投資である」という価値観を大切にし、65歳定年制度、役職定年や年齢による処遇の切り下げなどの廃止を行い、新入社員から65歳まで同じ人事制度のなかで成長し合える環境を整えました。今後、定年延長を検討されている企業のみなさまにおかれましても、法令で定年が65歳以上となり追い込まれてからではなく、定年延長を前向きにとらえて自社に合った制度を検討いただければと考えます。今野 ありがとうございます。短い時間でしたが、高齢者雇用を進めるうえでのキーコンセプトが示されたように思います。高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度【パネリスト】 川崎重工業株式会社 人事本部 労政部 労政企画課課長川内寿夫氏 太陽生命保険株式会社 人事部 人事課長一番ヶ瀬智彦氏【パネリスト】【コーディネーター】 学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長今野浩一郎氏パネルディスカッション東京

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