エルダー2021年3月号
19/68

特集高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度を考えるエルダー17当社は、1899(明治32)年に「鳥井商店」として開業しました。ワインから始まり、ウイスキー、ビール、烏龍茶などの酒類・飲料の製造事業を行っています。2014(平成26)年にはアメリカの蒸留酒メーカーであるビーム社を買収し、同社と共同開発したジンを世界で展開するなど、ここ数年はグローバル化を進めています。現在、グループ会社は300社、従業員数は約4万人で、そのうち約半分が国内の従業員です。成長の原動力は、創業者である鳥井信治郎が口癖のようにいっていた「やってみなはれ」という挑戦の精神です。当社では、2013年4月に当時の60歳定年を延長し、65歳定年制を導入しました。すでに2001年に再雇用制度を導入していましたが、法改正による65歳までの雇用義務化などが見込まれるなか、2010年あたりから新たな制度の検討を始めて、再雇用制度の拡充、あるいは定年の延長について協議し、結果として、65歳への定年延長に至りました。従前の再雇用制度は、雇用形態が嘱託社員で、対象者は、希望者のうち勤務地までの住居を自ら確保できる者、という内容でした。また、単年度契約で、処遇水準は60歳到達時点の資格にかかわらず基本的に一律で、福利厚生や考課、資格の定義はありませんでした。これに対して、2013年からの65歳定年制は、対象者は60歳を迎える社員全員、雇用形態は正社員です。処遇水準は、60歳時の資格に応じて3段階とし、一般的なケースで60歳到達時点の6割から7割の水準となるよう設定しました。福利厚生や考課、資格の定義は、社員ですから変わらず適用になるという制度です。この制度を導入した2013年当時の世間における高齢者雇用対応は、約94%は継続雇用制度導入で、残りの約6%が定年制の廃止、あるいは引上げというものでした(厚生労働省:平成23年「高年齢者の雇用状況」※従業員数301名以上)。当時はまだ、定年の年齢を引き上げる企業はレアだったのです。当社の従前の再雇用制度を振り返ると、再雇用率は95%前後で、毎年100人前後が再雇用となる状況でした。当時のシニア層の意識調査では、定年が一つの区切りになり、「やはりモチベーションが下がる」といった意見のほか、処遇が一律であったため「成果を出しても給与は変わらない」、「60歳以前と同じ業務継続にもかかわらず、処遇が大幅に下がる」といった不満の声が聞かれました。あるいは、当社はモノづくりの会社ですから、「技術伝承などをになう役割がある」という気概を持っていたり、「特定の技能があるEP(嘱託)は社員と変わらず活躍している」といった声もあり、再雇用制度の拡充も検討しつつ、トップの判断で、最終的に65歳定年制の導入となりました。65歳定年制を導入する一方でシニア期のサポート施策を構築65歳定年制の導入にともない、退職金・年金企業事例発表❸福岡シニア層のさらなる活躍に向けて65歳定年制、70歳までの再雇用制度を整備千 大輔サントリーホールディングス株式会社ヒューマンリソース本部 人事部部長 兼 ダイバーシティ推進室長

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る