エルダー2021年3月号
46/68

株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2021.344今回は「賞与」について取り上げます。意外かもしれませんが、3月は賞与となじみ深い月です。期末(決算)賞与の支給や、翌年度の従業員の処遇について経営側と従業員側が話し合う「春闘」の実施がこの時期にあたるからです。賞与の目的はさまざま賞与という言葉よりも、「ボーナス」の方をよく耳にするかもしれません。しかし、人事ではボーナスではなく、賞与という用語を使います。ボーナスは何かよかったときのみ支払われる報奨金的な意味合いであるのに対して、賞与はより幅広い目的で支給されるからです。目的の確認に入る前に賞与の前提に触れておくと、賞与は労働に対する支給義務が法律上定められたものではありません。そのため、賞与という制度を設けるかどうかは企業の自由です。そして、ここがポイントですが、何のために支給するかの目的も企業の設定次第ということになります。先ほど〝幅広い目的〞と書きましたが、おおよそ次の目的といわれています。①業績の還元:利益などの業績により賞与が増減する仕組みを用いている場合は、この目的に基づいています。業績に連動させることで、業績悪化時には人件費の負担を抑制し、一方で好調時には従業員へより多く還元したいという意図があります。②生活給の一部:年末や盆などの、支出の多い特別な時期の生活費を支援することを目的としています。賞与が毎年一定程度支給されている場合は、住宅ローン支払いなどの生活設計と連動させやすくなるため、従業員側にすると生活給としての認識が強くなります。③給与の後払い:本来は「年俸制」にみられるように、従業員に予定している年収を12カ月で分割して毎月の給与で支給すればよいのですが、あえて分割数を増やして給与分の残りをまとめて支払うのが賞与です。これは目的そのものというよりも、①と②を実現するための手段といった方が正しいかもしれません。賞与の支給方法は目的によって変わる賞与の支給方法は目的によって変わります。例えば、業績還元にした場合は、営業利益や経常利益などの賞与の総予算(「賞与原資」ともいいます)を決める「業績指標」を定め、そのうちのどの程度を賞与に配分するかをルール化します。ルールが明確で従業員にもしっかり説明されている場合は、業績悪化時には賞与不支給もあり得ますし、業績好調時には相当額の賞「賞与」第10回

元のページ  ../index.html#46

このブックを見る