エルダー2021年3月号
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■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー45与が支給される場合もあります。一方で、生活給的要素が強い場合は、業績悪化時であっても容易には賞与は減額できないことになります。賞与支給の根拠は就業規則・給与規程などに記載することですが、支給を断定する表現や支給水準が明記されている場合には、業績などの事情によらず、その記載に則って支払うのが基本となります。しかし、業績か生活給かの両極ではなく、図表にあるように一定程度は生活給として固定的に支払う(=最低支給額を定める)が、残りは業績に連動させるという組合せがよくある運用です。また、賞与の支給回数は夏・冬の2回としている会社が多いですが、事業年度の年度末に「期末賞与」を支給している企業もあります。この場合は、夏・冬は固定的、期末賞与は業績還元として、支給か不支給は業績次第という傾向が強くなります。このため、期末賞与を「決算賞与」と呼ぶこともあります。さらに、業績還元について一つ触れておくと、企業全体の業績だけでなく、個人の業績貢献度である評価結果を反映させ、個人単位の支給額に差をつけるケースが多く見られます。例えば、標準では基本給の1カ月分相当が支給されるところ、評価の高い従業員は1・3カ月分相当、評価が低い従業員には0・7カ月分相当の支給額となるといったものです。このような差をつけるのは、毎月の給与は従業員の生活の安定の観点から大幅な増減は望ましくないものの、賞与は従業員のモチベーション向上につなげるために、メリハリを持たせた支給を柔軟に行うことができるからです。高齢者雇用と賞与賞与は法律的な制限が少ないため、企業の意思次第で目的や支給方法を定められます。そのため、従業員に伝えたいメッセージを表現するのに適しています。また従業員との合意が前提ですが、運用の見直しがしやすいというメリットもあります。高齢者雇用についても同様です。労務行政研究所「高年齢者の処遇に関する実態調査」(平成31年)によると、再雇用者に対して賞与支給のある企業の割合は約77・5%と、幅広い企業で支給されています。しかし、年間賞与の分布状況を見ると、20万円未満が27・8%と低い水準にとどまります。寸志程度の金額で賞与としている企業も実際には見受けられます。しかし、これは企業の高齢者雇用へのメッセージという観点からは、工夫の余地があるといえます。定年前と同様、またはそれ以上の成果の創出を期待するのであれば、高評価を受けた場合には定年前と同様か、それ以上の賞与を支給する仕組みが考えられます。またチームワークを重視する場合には、業績還元の期末賞与は定年前の従業員と同額の支給を受けるといった措置も必要だと考えます。再雇用者のモチベーション引上げが話題になることがありますが、本人への期待の伝達とともに、賞与の支給方法を見直すことは有効な施策ではないかと筆者は考えています。☆  ☆今回は「賞与」について解説しました。次回は、「働き方改革」について取り上げる予定です。出典:筆者作成図表  賞与の支給方法夏賞与(100%)固定(50%)業績連動(50%)冬賞与(100%)固定(50%)業績連動(50%)夏賞与(100%)固定(100%)冬賞与(100%)固定(100%)期末賞与(100%)業績連動(100%)* 実際は、年間2回支給でも1回は業績連動なし、年間3回支給の場合でもすべて業績連動ありなどの組合せもあります【年間2回支給の場合(例)】【年間3回支給の場合(例)】生活給業績還元

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