エルダー2021年3月号
64/68

2021.362巧みな包丁さばきで鯛の薄造りをつくる。愛用の包丁は、なだ万の先輩であり、テレビ番組「料理の鉄人」で知られる中村孝こう明めいさんから譲り受けたものジン」では20年以上にわたって和食のつくり方を紹介するなど、日本料理の普及にも貢献してきた。これらの功績により、令和2年度「現代の名工」を受賞した。2019年になだ万を退職し、ホテルニューオータニへ移籍。法人向け会員制クラブ「ガーデンコートクラブ」の料理長を経て、昨年9月からホテルニューオータニ幕張の日本料理顧問を務める。これまでの豊富な経験を活かし、レストランや宴会場で提供する日本料理のアドバイザーを務めるほか、料理教室などのイベントを開催している。「東京の第一線でやることにこだわってきましたが、コロナ禍で営業がままならないなか、幕張で地元の顧客を増やしてほしいという要望を受け、住んでいる千葉県に貢献したいという思いから、喜んで引き受けました。地元の新鮮な素材を活かした料理で、新たなファンを開拓したいと思います」厳しい親方から学んだ「味へのこだわり」いまや押しも押されもせぬ人気料理人の黒田さんだが、駆け出しのころは、師事した親方のあまりの厳しさに、一度は修業の道から離れたこともあった。しかし、その後思い直し、料理人の先輩の紹介でたまたま入ることができたのが、帝国ホテルのなだ万だった。なだ万の初代総料理長だった熊くま野の保たもつ氏のもとで、料理の細やかさ、奥深さを学んだ。「親父(熊野氏)は50過ぎまで煮方※1としてさまざまな店で修業を積んだ『完璧な煮方』といわれた人で、『うまい』ということにものすごくこだわりを持っていました。例えば、ある日、厨房で慌ただしく朝食の準備をしていると、煮物の上にのせた絹さやを見て、『食ってみろ。うまいか?』と聞くんです。『青味※2ですから、そ料理人の仕事は調理場を守ることですが、チャンスがあれば新しいことにどんどんチャレンジして、自分の可能性を広げるべきです※1 煮方……煮物を担当する人※2 青味……料理の彩りをよくするために使う緑色の野菜

元のページ  ../index.html#64

このブックを見る