エルダー2021年4月号
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特集人事労務担当者のための年金入門エルダー111 はじめに  ―老齢厚生年金とは―日本の公的年金には、「老齢年金」、「遺族年金」、「障害年金」の三種類の保障があり、なかでも老齢年金は老後の生活保障としての大きな役割を果たしています。会社員や公務員の方は厚生年金に加入していますので、基礎部分である「老齢基礎年金」に加えて「老齢厚生年金」を受け取ることになります。この「老齢厚生年金」の仕組みについて見ていきます。■老齢厚生年金の受給要件と年金額老齢厚生年金を受け取るための条件は老齢基礎年金の受給資格があり、かつ65歳以上であることです。公的年金としては、だれでも20歳から60歳までの40年間国民年金に加入することが義務づけられています。老齢基礎年金を受け取るためには、その40年間のうち最低でも10年間保険料を納付していることが必要です(免除期間を含む)。不足する場合はカラ期間※1を見つけるなどして10年にする必要があります。厚生年金に加入している人は同時に国民年金にも加入していることになります。10年のうち1カ月でも厚生年金保険の加入期間があれば老齢厚生年金として受け取れます。10年という条件は2017(平成29)年8月から適用され、それまでは25年必要でした。現在の制度における老齢厚生年金は60代前半の「特別支給の老齢厚生年金」(12頁参照)と「65歳からの老齢厚生年金」に分かれます(図表1)。どちらも報酬比例部分の老齢厚生年金が基本年金額となります。報酬比例の年金とは給与に比例するという意味で給与・賞与額をベースに標準報酬月額等が高いほど、また厚生年金保険の加入期間が長いほど高額になります。計算式は図表2の通りです。平均標準報酬月額※3と平均標準報酬額※4は生年月日に応じた再評価率で算出します。現在は従前額保証といってそれ以前の計算式が残っており、丈比べをして高額な方を支給するルールになっています。経過的加算額は定額部分に相当※1 カラ期間……年金額には反映されないが、受給要件の加入期間にできる期間のこと。学生時代や海外在住していた期間など※2 老齢厚生年金報酬比例部分の計算式……本来水準の計算式。給付乗率は昭和21年4月2日以後生まれの場合※3 平均標準報酬月額……加入期間の標準報酬月額の合計額を加入月数で割った額※4 平均標準報酬額……加入期間の標準報酬月額と標準賞与額の合計額を加入月数で割った額図表2 老齢厚生年金報酬比例部分の計算式※2平均標準報酬月額 × 7.125 / 1000 × 2003年3月以前の被保険者期間の月数 + 平均標準報酬額 × 5.481 / 1000 × 2003年4月以降の被保険者期間の月数図表1 老齢厚生年金の構成65歳60歳(受給開始年齢)報酬比例部分老齢厚生年金経過的加算額加給年金額定額部分老齢基礎年金特別支給の老齢厚生年金出典:日本年金機構『老齢年金ガイド』より一部修正して掲載解 説1「老齢厚生年金」の仕組みを理解しようオフィス・椿 代表 社会保険労務士 清水典子

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