エルダー2021年4月号
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2021.41436ヵ月=18%減額)、63歳で受給する額の82%になります。一方、老齢基礎年金は5年早く受け取ることになり(0・5%×60ヵ月=30%減額)65歳で受給する額の70%になります。また、63歳で繰上げ(Cパターン)すると、特別支給の老齢厚生年金は受給開始年齢がきているので、減額されずに100%の年金額で受け取れます。一方、老齢基礎年金は2年早く受け取ることになり(0・5%×24ヵ月=12%減額)65歳で受給する額の88%になります。年金次郎さんの場合、60歳で繰上げ(Eパターン)をすると、老齢厚生年金も老齢基礎年金も通常より5年早く受け取ることになり(0・5%×60ヵ月=30%減額)65歳で受給する額の70%になります。また、63歳で繰上げ(Fパターン)すると、老齢厚生年金も老齢基礎年金も2年早く受け取ることになり(0・5%×24ヵ月=12%減額)65歳で受給する額の88%になります。どちらの場合の繰上げも老齢基礎年金と老齢厚生年金は必ずセットで繰上げすることになっています。繰上げの有無にかかわらず、老齢厚生年金は在職老齢年金(15頁参照)の対象になりますので、厚生年金保険に加入中の方は、繰上げ請求で年金額そのものが減額され、さらに在職老齢年金で給与等が高ければ年金額が減額されますので、多くの場合メリットはないと考えられます。図表5の年金太郎さんのように、加給年金は厚生年金を繰り上げても、65歳までは支給されません。また、障害年金に該当するようになっても障害年金を請求できない場合があります。次に、老齢厚生年金の繰下げについてみていきます。繰下げの仕組みも繰下げの時期や生年月日により異なるため、ここでは2007(平成19)年4月以降に老齢厚生年金の受給権が発生した方で1942(昭和17)年4月2日後に生まれた方の例をみてみます(図表6)。老齢厚生年金の繰下げと老齢基礎年金の繰下げ請求は、①同時に請求する、②別々に請求する、③片方だけを繰下げして、残りは65歳から受け取る、という三つのなかから選択することができます。また、繰下げの意思があり待機していたが、まとまった年金(現金)が必要になるなど、事情が変わった際には65歳にさかのぼって経過した分の年金をまとめて受給することも可能です。ただし過去においても、将来においても増額はありません。このように、繰下げ請求にはいくつかの選択肢があります。老齢厚生年金と合わせて加給年金が受け取れる人は老齢基礎年金だけを繰り下げる、老齢基礎年金と合わせて振替加算※7が受け取れる人は老齢厚生年金だけを繰り下げる(③のパターン)などの組み合わせを検討してもよいでしょう。加給年金や振替加算は繰下げと同時に発生し、繰下げによる増額はないためです。また、以下の点にもご注意ください。厚生年金基金※8がある人は、老齢厚生年金の繰下げと同時に繰り下げなければいけません。そして繰下げ待機中に、遺族年金や障害年金の受給の権利ができると増額率はその時点までで計算されます。自分が希望した通りの年齢で繰下げ請求できるとはかぎりません。また、家計全体でみ※7 振替加算……配偶者加給年金が終了すると、相手側に加算が振替わることから「振替加算」と呼ぶ。生年月日に応じた加算がつき昭和41年4月1日以前生まれの方が対象。厚生年金保険および共済組合等の加入期間を合わせて20年未満であることが条件※8 厚生年金基金……老齢厚生年金の一部を代行し、企業独自の上乗せ給付を行う公法人図表6 繰下げのバリエーション※筆者作成65歳70歳142%142%65歳69歳133.6%100%100%65歳67歳69歳133.6%116.8%① 同時に請求(配偶者が5歳年下の場合)老齢厚生年金一生涯老齢基礎年金② 別々に請求③ 片方だけ請求(振替加算が受給できる人の場合)老齢厚生年金一生涯老齢基礎年金老齢厚生年金一生涯老齢基礎年金繰下げ待機中繰下げ待機中加給年金(受け取らずに終了)振替加算

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