エルダー2021年4月号
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2021.416停止となる制度のことをいいます。70歳以降も勤務を継続している場合は厚生年金の保険料は徴収されませんが、在職老齢年金の対象になります。計算方法は60代前半と後半で異なり、図表7の計算方法により老齢厚生年金が減額されます。■計算の手順1 基本月額を算出する…対象となる年金額を12で割り月額を算出2 総報酬月額相当額を算出する…その月の標準報酬月額とその月以前の1年間に受けた標準賞与額の合計を12で割り1カ月分を算出3 1+2が28万円、または47万円を超えるか判断し、超える場合には図表7計算方法①〜④を計算4 老齢厚生年金月額−支給停止額=在職老齢年金(月額)  ※マイナスの場合は加給年金も含めて全額支給停止。経過的加算額のみ支給。5 一部支給の場合で加給年金が加算される人は加給年金額(月額)を加える。  ※加給年金の額は在職老齢年金の仕組みにより減額されることはない。■60代前半の在職老齢年金支給停止の対象となるのは、特別支給の老齢厚生年金です。繰上げした場合の老齢基礎年金は全額支給されます。基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円※9に達するまでは支給停止はありません。■60代後半以降の在職老齢年金支給停止の対象となるのは、加給年金、経過的加算を除く老齢厚生年金です。老齢基礎年金は全額支給されます。基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円※10に達するまでは支給停止はありません。■共通のルール厚生年金基金に加入している人は、厚生年金基金に加入していなかったと仮定した場合の老齢厚生年金額で計算します。在職中は給与や賞与の額が増減すると総報酬月額相当額も変動し、支給停止額が変わります。年金額も月ごとに変動する可能性があり、改定される場合は年金額変更通知書が発行されます。ところで、年金額が決定した後も在職中は厚生年金保険料が毎月控除されます。控除されている厚生年金保険料は厚生年金額にどのように反映されるのでしょうか。これは退職時改定といい、退職後1カ月以内に再就職しなかったことを確認後、在職中の被保険者期間等を加えて年金額が再計算される仕組みになっています。また在職中の場合も65歳時、70歳時で再計算がされます。なお、法改正により2022年4月以降65歳以上の在職老齢年金は在職定時改定により毎年再計算されます。60歳以降も働く人にとっては、収入が増えるほど年金が減っていくことは、働くことに対するインセンティブの低下につながります。そこで、2020年の年金制度改正により2022年4月から60代前半の在職老齢年金の支給停止調整開始額(28万円)は、60代後半の在職老齢年金の支給停止調整額(47万円)に合わせ統一されます。これにより在職老齢年金による停止額を気にせずに働き続けることができる方が増えることになります。5 おわりに2021年4月1日に改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業確保措置が努力義務化されました。少子高齢化が急激に進展するなかで、高齢者が活躍できる環境整備が進められています。年金制度も来年からさまざまな改正が施行されます。これからは、自らの働き方やライフスタイルに合わせて、年金をいつからどのような形で受け取るのかを選択する時代になりました。従業員のみなさまが退職前から年金制度について正しい知識を得て、より豊かな人生を送れるようになることを望みます。※9 28万円……支給停止調整開始額(年金がカットされるボーダーライン)で令和3年度の額※10 47万円……支給停止調整額(年金がカットされるボーダーライン)で令和3年度の額

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