エルダー2021年4月号
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特集人事労務担当者のための年金入門エルダー17重要性が増す自助努力の資産形成公的年金の給付水準の長期的な引下げが見込まれるなかでは、公的年金以外の老後の備えが重要です。政府は企業年金・個人年金を拡充し、個人の自助努力を後押しする政策を進めています。なかでも、近年、注目されているのが「確定拠出年金(DC:Defined Contribution)」です。2016(平成28)年の制度改正では、「個人型DC(iDeCo:イデコ)」への加入対象者の拡大や中小企業向け制度の整備などが行われました。さらに、2020(令和2)年に成立した改正法により、企業型DC・iDeCo双方の加入可能年齢の引上げや、企業型DC加入者のiDeCo加入要件の緩和などが行われることになりました。一部の企業年金加入者については、iDeCoの拠出限度額の見直しも実施されます。企業や個人がDCを利用できる機会が広がり、老後に向けた自助による資産形成を実践できる環境は整備されてきています。本稿では、DCの制度概要や近年の制度改正の動向を確認します。また、企業がDCを利用するうえでカギとなる従業員への投資教育についても、考察したいと思います。企業型DCとiDeCoの概要DCは、加入者自身が掛金を運用し、掛金と運用収益の合計を年金資産として受け取る制度です。加入者は、提示された運用商品(定期預金、保険商品、投資信託︿以下、「投信」﹀)のなかから一つ以上を選択し、掛金の配分割合を指示します。企業が掛金を拠出する「企業型DC」と、個人が任意で加入し掛金を拠出する「個人型DC」があります。DCの最大の特徴は節税効果の高さであり、三段階で税制上のメリットがあります。第一は拠出時で、拠出した掛金は全額が所得控除の対象となります。第二は運用時で、通常の貯蓄であれば金融商品の運用益には税が課されますが、DCを通じた運用益は非課税です。第三は受給時で、年金収入は税法上雑所得とされるものの手厚い公的年金等控除の適用があります。 また、離職時や転職時に企業型DCや「確定給付型年金(DB:Defined Benefit)」とiDeCoの間での資産移管(ポータビリティ)が一部のケースを除き確保されていることも大きな特徴で、多様な働き方に対応した仕組みになっています。ただし、DCで積み上げた資産は60歳以降にならないと受け取れず、中途引出しができない点に注意が必要です。解 説2制度拡充により企業の利用機会が広がる「企業型DC」と「iDeCo」大和総研 政策調査部 佐川あぐり

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