エルダー2021年4月号
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2021.418DC制度拡充の転機となった2016年制度改正DCは2001年に確定拠出年金法が成立したことでスタートし、2012年から企業型DCでマッチング拠出制度(従業員が事業主拠出に追加して拠出できる仕組み)が導入されるなどの制度改正がありました(図表1)。そして2016年に、制度が大幅に拡充されました。最大の注目点は、個人型DCの加入対象者の拡大です。それ以前、個人型DCの対象者は、自営業者や企業年金のない会社員に限定されていましたが、「iDeCo:イデコ」という愛称が付され、2017年1月からは、原則としてすべての成人国民が利用できるようになりました。このインパクトは大きく、2016年末に30・6万人にとどまっていたiDeCoの加入者数は2020年末には181・7万人となり、4年間で約6倍になりました。また、2016年には中小企業向けの制度が二つ創設されました。一つが「簡易型DC」で、導入時に必要な書類や業務報告書が簡素化された企業型DCです。もう一つが「中小事業主掛金納付制度(iDeCo+:イデコプラス)」で、iDeCoに加入する従業員の掛金に事業主が追加的に掛金を拠出できる制度です。これらの制度改正の背景には、適格退職年金や厚生年金基金といったそれまでの代表的な企業年金制度が事実上廃止され、中小企業を中心に企業年金の導入割合が低下していたことがあります。新設された二つの制度は、通常の企業型DCやDBに比べて導入コストが低く、従業員にとっては、福利厚生が充実するというメリットがあります。人材不足に悩む企業にとっては、これら制度を利用すれば人材確保につながる効果が期待できるでしょう。当初、対象企業の要件は従業員規模100人以下でしたが、2020年10月に300人以下へ引き上げられ、より多くの企業が利用可能となりました。さらに、DCの運用における課題改善に向けた見直しも行われました。DCは加入者自身が運用の指示をしますが、運用の経験がない加入者が少なくなく、運用商品を選択できない(しない)加入者がいたり、そうした加入者の資金が、元本確保型の商品に多く投資されたりするという課題がありました。DCの運用は収益が非課税で再投資による複出典:各種資料をもとに大和総研作成図表1 DCの制度改正の経緯年月主な内容平成13(2001)6確定拠出年金法が成立平成13(2001)10「企業型確定拠出年金制度(企業型DC)」スタート平成14(2002)1「個人型確定拠出年金制度(個人型DC)」スタート平成23(2011)8「国民年金及び企業年金等による高齢期における所得の確保を支援するための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立 ◦企業型DCにおけるマッチング拠出の実施【2012年1月施行】 ◦企業型DCの加入可能年齢の引上げ(60歳未満⇒65歳未満)【2014年1月施行】平成28(2016)5「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」が成立①企業年金の普及・拡大 ◦中小企業向け制度の創設(簡易型DC制度、中小事業主掛金納付制度)【2018年5月施行】 ◦掛金の年単位化【2018年1月施行】②ライフコースの多様化への対応 ◦個人型DCの加入範囲の拡大【2017年1月施行】 ◦ポータビリティの拡充【2018年5月施行】③DCの運用の改善【2018年5月施行】 ◦継続教育の努力義務化 ◦運用商品提供数の抑制(提供数は35本の上限を設定) ◦運用商品除外規定の整備  (商品選択者の「全員の同意」から「3分の2の同意」に要件を緩和) ◦運用商品の選定基準の変更(元本確保型商品を提供しないことも可能に) ◦指定運用方法(デフォルト商品)に関する規定の整備令和2(2020)5「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立 ◦企業型DCの加入可能年齢の引上げ(65歳未満⇒70 歳未満)【2022年5月施行】 ◦iDeCoの加入可能年齢の引上げ(60歳未満⇒65歳未満)【2022年5月施行】 ◦企業型DC加入者のiDeCo加入要件の緩和  (規約の定め、事業主掛金の上限引下げ不要に)【2022年10月施行】 ◦簡易型DC、iDeCo+対象企業規模要件の緩和  (従業員100人以下⇒300人以下)【2020年10月施行】

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