エルダー2021年4月号
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特集人事労務担当者のための年金入門エルダー19利効果が得やすい点がメリットです。また、長期的な投資では、相場変動や景気循環の影響を平準化できるドルコスト平均法※の効果が得られるため、投信のようなリスク資産での運用が有効といえます。にもかかわらず、低利回りの元本確保型商品が多い資産構成では、将来の年金資産が十分に積み上がらない可能性が高まります。そこで、運用未指図の加入者の資産に関する運用について指定運用方法(デフォルト商品)が規定され、事業主はデフォルト商品にバランス型投信などの長期投資に適した商品を設定しやすくなりました。これは米国や英国など諸外国ではすでに取り入れられている方法で、これを機に投信での運用がこれまで以上に広がることが期待されています。今後予定される制度改正2020年に成立した改正法により、主に二点の制度改正が実施されます。一点目は、企業型DCとiDeCoの加入可能年齢の引上げ(2022年5月施行)です。現行では、企業型DCの加入可能年齢の上限は65歳未満、iDeCoは60歳未満ですが、それぞれ70歳未満、65歳未満に引き上げられます。掛金を拠出できる期間が延びれば、より多くの掛金を非課税で拠出できるようになります。自助努力による年金の充実という観点から望ましく、また、高年齢者の定年延長や雇用拡大に向けた取組みとも整合的といえます。二点目は、企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和(2022年10月施行)です。現在、企業型DCを導入する企業では、企業型DCへの事業主掛金の上限を減額することを規約で定めた場合にかぎり、従業員のiDeCo加入が認められています。これが見直され、事業主掛金の上限の減額や規約の変更がなくても、企業型DCの加入者がiDeCoに加入できるようになります。これにより、拠出枠を余らせている従業員はiDeCoに加入し、拠出できるようになります。iDeCoの掛金は所得控除の対象となりますから、利用したいという従業員のニーズは高いでしょう。企業にとっても、コストのかかる規約変更が必要なくなり、事務※ドルコスト平均法……価格変動リスクのある株式や投資信託などに一度にまとめて投資すると、タイミングによっては高値掴みしたり安値で買い損ねたりするリスクがある。ドルコスト平均法は投資機会を分散して継続的に投資することでこうしたリスクを回避でき、平均購入単価を平準化させる効果がある出典:厚生労働省 第12回社会保障審議会企業年金・個人年金部会(2020年7月9日)資料1「より公平なDC拠出限度額の設定の検討について」より大和総研作成図表2 DCの拠出限度額(月額)見直しのイメージ企業年金なし企業型DCのみ実施企業型DC+DBを実施DBのみ実施iDeCo2.3万円iDeCo6.8万円(注1)国民年金基金第1号被保険者第2号被保険者第3号被保険者厚生年金保険国民年金(基礎年金)iDeCo2.0万円iDeCo1.2万円企業型DC5.5万円(注3) 企業型DC2.75万円(注3) DB(注2)iDeCo1.2万円iDeCo2.3万円見直し後企業年金なし企業年金(企業型DC・DBの両方、またはいずれか)を実施iDeCo2.3万円iDeCo6.8万円(注1)国民年金基金厚生年金保険国民年金(基礎年金)iDeCo2.0万円企業型DC5.5万円-DBごとの掛金相当額iDeCo2.3万円見直しの対象企業型DC5.5万円(注3) 企業型DC2.75万円(注3) (注1)国民年金基金との合算枠。(注2)DBには、厚生年金基金、私学共済、年払い退職給付などを含む。(注3)マッチング拠出導入企業の企業型DC加入者は、企業型DCの事業主掛金額を超えず、かつ、事業主掛金額との合計が月額5.5万円(DBを併設する企業の場合は2.75万円)を超えない範囲内でマッチング拠出が可能。マッチング拠出かiDeCo加入かを加入者ごとに選択可能。

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