エルダー2021年4月号
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2021.420手続きなどの負担だけで、従業員の老後に向けた資産形成を支援できます。また、DCには拠出できる掛金に上限があり、企業年金の有無や、加入者の属性によってその金額が異なっています。この点について、企業年金(DBや企業型DC)に加入する従業員の間の公平を図るために図表2の通り拠出限度額が見直されることになりました(施行時期は調整中)。ポイントは二つです。一つは企業型DCとDBを併用する場合の限度額の見直しです。現行では、DBを併用時の企業型DCの限度額は、企業型DCのみの場合の限度額(月額5・5万円)の半分(同2・75万円)と一律に定められています。つまり、DBの掛金額は一律月額2・75万円と想定されてきましたが、実際の平均的な掛金額は2・75万円より小さく、多くの人々がその分の拠出枠を使えていないという問題がありました。そこで、DBごとの掛金額の実態を反映し、企業型DCの拠出限度額を5・5万円からDBごとの掛金額を控除した額とすることになりました。もう一つが、上記の見直しにともない、DBに加入している場合のiDeCoの拠出限度額が1・2万円から2・0万円に引き上げられます(ただし企業年金の事業主掛金額と合計した拠出枠は5・5万円)。企業のDC利用、カギは従業員への投資教育以上述べてきたように、DC制度の拡充が進められ、企業や個人がDCを利用できる機会はいっそう広がっています。その機会を活かすうえで重要なカギとなるのが投資教育です。企業型DCを導入する企業には、従業員に対して投資教育を行うことが義務づけられています。投資教育は、加入時教育と継続教育がありますが、特に重要なのが継続教育で、2018年5月からは努力義務化され、これまで以上に強化することが求められています。しかし、その実施方法に悩む企業は多く、ほぼすべての企業が実施している加入時教育と比べて、継続教育の実施率は低いようです。参考としたいのが、実際に企業型DCの継続教育の強化に取り組む企業の事例です。特定非営利活動法人確定拠出年金教育協会のウェブサイトには、企業の事例やDC担当者の経験談などが掲載されています。例えば、集合セミナーとeラーニングを併用する企業は多いですが、場所の確保や時間的なコストがかかる集合セミナーは重要な制度変更時などに実施し、常時eラーニングで自主学習できるようにするなどの工夫がみられます。また、年代や家族構成、勤続年数といった属性が多様な従業員を対象とする場合には、年代や投資の理解度別など、一定の属性で対象者を選別してセミナーを実施する例もあります。関心の低い層が多い入社1~2年目の若い世代を対象に集中的に教育機会を提供し、実践的に運用商品を選択して掛金の配分を行わせるなどの事例もあります。その結果、無関心だった社員が自身の運用状況を確認し運用商品の入れ替えを行うなど、行動に変化がみられているようです。もっとも、企業によって事情が異なるため、好事例のすべてを取り入れることはむずかしいと思いますが、参考となる部分はあるでしょう。一方で、iDeCoは個人が任意で加入する制度であり、iDeCoに加入する従業員に対して企業が投資教育を行う義務はありません。しかし、iDeCo+などを企業の福利厚生の一環として導入する場合は、制度利用に関する説明や投資教育などのサポートを、企業が継続的に提供していく必要があるでしょう。例えば、iDeCoの加入者は投資教育の実施を支援している企業年金連合会が提供するオンライン教材などを活用して継続教育を受けることが可能です。こうしたツールを活用し、職場という身近な環境でサポートできれば、従業員にとっても資産形成を実践しやすいでしょう。

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