エルダー2021年4月号
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特集人事労務担当者のための年金入門エルダー23業務中の事故により障害補償年金(労災年金)を受給している従業員が、60歳定年で退職した場合、その従業員が障害等級1~3級であれば「障害者特例」に該当することになり、現在段階的に支給されている65歳までの特別支給の老齢厚生年金は、報酬比例部分のみではなく定額部分も(要件に該当すれば加給年金も)支給されるようになります。A1 障害補償年金(労災年金)と障害厚生年金の支給調整障害補償年金(労災年金)と障害厚生年金を受給することになった場合、障害補償年金の額は(0・83の調整率がかけられ)減額されますが、障害厚生年金はそのまま全額支給されることになります。この減額にあたっては、調整された障害補償年金の額と障害厚生年金の額の合計が、調整前の労災年金の額より低くならないように考慮されています(図表3)。2 障害補償年金受給者が60歳定年で退職した場合の年金額(1)障害者特例による特別支給の老齢厚生年金について障害等級1級~3級の障害補償年金受給者が60歳~65際未満で退職すると老齢厚生年金は、障害者特例に該当します。障害者特例とは、60代前半に報酬比例部分相当の特別支給の老齢厚生年金が受給できる場合、以下の要件を満たしたときは、さらに定額部分(要件に該当すれば加給年金も)が受給できるものです。◦厚生年金保険の被保険者でないこと◦障害等級1級から3級に該当する程度の障害の状態にあること2021(令和3)年3月現在、障害者特例を受給できるのは、性別、年齢別に整理すると図表4のようになり、「障害者特例定額部分」が追加で受給できるようになります。障害者特例の請求をすると、認められれば請求の翌月分から障害者特例を含む特別支給の老齢厚生年金を受給できます。すでに障害厚生年金等の受給権がある場合、厚生年金保険の被保険者を喪失した日に障害者特例の請求があったものとみなされます。(2)定年退職以降の公的給付の選択肢定年退職以降の公的給付の受給については、次のどちらかの選択となります。①これまで通りの障害厚生年金・障害基礎年金と労災保険の障害補償年金を受給する。②老齢厚生年金と労災保険の障害補償年金を受給する。②の場合は、労災保険の障害補償年金の一部減額はなくなり100%支給になります。よって障害厚生年金・障害基礎年金よりも、老齢厚生年金のほうが少なくても合計金額は、多くなる場合があります。また、障害厚生年金・障害基礎年金は非課税ですが、障害者特例を含む特別支給の老齢厚生年金は課税対象です。両者の年金額が、さほど変わらないのであれば非課税の障害厚生年金のほうが有利かもしれません。出典:筆者作成図表3 労災年金と厚生年金等の調整率労災年金障害補償年金障害年金社会保険の種類併給される年金給付厚生年金及び国民年金障害厚生年金及び障害基礎年金0.73厚生年金障害厚生年金0.83国民年金障害基礎年金0.88出典:筆者作成図表4 障害者特例を受給できる対象者606162636465男S30.4.2〜S32.4.1報酬比例部分老齢厚生年金女S35.4.2〜S37.4.1障害者特例定額部分老齢基礎年金男S32.4.2〜S34.4.1報酬比例部分老齢厚生年金女S37.4.2〜S39.4.1障害者特例定額部分老齢基礎年金男S34.4.2〜S36.4.1報酬比例部分老齢厚生年金女S39.4.2〜S41.4.1障害者特例定額部分老齢基礎年金

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