エルダー2021年4月号
26/68

2021.424なお、60歳定年退職後に雇用保険の基本手当※を受給する場合は、老齢厚生年金は全額支給停止になるので注意が必要になります。一方、障害厚生年金・障害基礎年金とは支給調整がありません。よって、退職後は雇用保険の基本手当+障害厚生年金・障害基礎年金+障害補償年金を受給し、基本手当終了後、報酬比例部分の支給開始年齢到達時に、障害者特例による特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分+定額部分)+障害補償年金に選択替えを検討することが考えられます。今般の新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務制度の導入を検討しています。在宅勤務となれば通勤手当が不支給となりますが、この場合、将来の年金支給額に影響が出ると聞きました。その理由や、そのほかの留意点などがあれば教えてください。在宅勤務制度を導入した結果、通勤手当が廃止されてその分の標準報酬月額が下がると、社会保険料も下がることになります。将来の年金受給額は、現役時代に納める社会保険料の額により影響を受けますので、理論上は年金額が減少する可能性があるということです。Q4A1 通勤手当とは通勤手当については、労働基準法には記載がなく、会社に支払い義務もありません。会社が任意に設定できるものです。通勤手当は原則非課税であり、国税庁によると、非課税の前提となるのは電車やバスなどの公共交通機関を利用した通勤やマイカーや自転車などで通勤しているケースです。ただし、1カ月あたりの合理的な運賃などの額が15万円を超える場合は課税対象となります。このように通勤手当は一定額まで非課税扱いとすることが認められていますが、通勤の実態がないにもかかわらず通勤手当の名目で非課税支給を続けることは、税務上の観点で問題がないとはいえません。2 テレワーク時代における通勤手当の扱い新型コロナウイルスの影響によりテレワーク(在宅勤務)が急速に普及し、通勤は減少傾向にあります。そうした流れのなか、これまでのような通勤手当を廃止する会社が出てくるのは必然であり、通勤手当に代わる手当について検討している会社も多いことでしょう。例えば、在宅勤務が増え、在宅でかかる通信費・光熱費などの負担を在宅勤務手当などによって補う方法が採られるケースもありますが、在宅勤務手当は給与所得とみなされ、課税対象となることもあるので注意が必要です。3 通勤手当の減額による年金への影響今後は、勤務形態を原則テレワークとする会社が増えていく可能性もあります。最近は、固定的なオフィス出勤の必要がなくなったことで、いわゆる通勤手当のあり方を見直す動きも出ています。厚生年金は加入期間の月例給与(通勤手当含む)と賞与を合計した平均額から決定されるため、通勤手当の減額によって、標準報酬月額が減少し、厚生年金保険から支給される年金額が減ってしまう可能性があります。標準報酬月額は、報酬月額(基本給の他各種手当を加えた1カ月の総支給額)の範囲(レンジ)に応じて1等級から32等級まであります。各等級の金額幅は、数千円から3万円ほどです。仮に通勤手当が廃止されたとしても、そもそもの額が少なかったり、在宅勤務手当など別の形で手当を受けたりしていれば、等級に変化が生じない可能性もあります。また、昇給などによって給与が増加した場合は等級が上がりますから、通勤手当の廃止の影響などによる現在の標準報酬月額については考えすぎる必要はないといえるかもしれません。※ 雇用保険の基本手当……求職者の失業中の安定を図りつつ、求職活動を容易にすることを目的とし、被保険者であった人が離職した場合において、働く意思と能力を有し、求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない場合に支給されるもの

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る