エルダー2021年4月号
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エルダー25FOOD日本史にみる長寿食食文化史研究家● 永山久夫里山のゼンマイ・ワラビ採り「土手食い」の知恵昔は春になると「土手食い」という習慣があり、親が子どもたちを連れて土手や近くの里山に出かけ、食用になる野草や山菜の見分け方を伝授してくれたものです。なかには毒草や口にすると腹をこわす草などもあり、それらの見分け方を覚える野外教室のようでした。昔は凶作や飢き饉きんが多く、備蓄した食料がなくなると、最悪の場合は野草や山菜などでしのがなくてはなりません。子どもでも、しっかりとした救きゅう荒こう食しょく(凶作時の非常食)の知識がないと、生き残るのがむずかしい時代だったのです。戦後になり生活が安定してからも、春山に入っての山菜採りは子どもたちの間でも人気がありました。なかでも人気のあったのは、ゼンマイやワラビなどで、走り回りながら採取したものです。春に一年分を保存ゼンマイやワラビは、春の山でたくさん採取して茹ゆで上げ、むしろの上に広げて天日干しにし、乾燥品にして一年分を保存します。干しワラビは祝いごとの料理や、来客時のご馳走に用いられました。「ゼンマイ」という奇妙な名前の由来が面白い。渦を巻いた穂先が、昔の小銭に似ているところから「銭ぜに巻まき」と呼ばれ、その呼び名がなまって「ゼンマイ」になったという説があるのです。野山に生えていますが、特に水気の多い所を好み、渓流や水路のそばなどに生えています。新芽はきれいに渦を巻き、表面は綿毛でおおわれていますが、成長すると綿毛はなくなります。免疫力の強化作用干しゼンマイにしたものは食物繊維が多く、100g中に約34gも含まれています。全体の約3分の1が食物繊維です。お通じをスムーズにして肥満を防ぎ、腸に元気をつけるうえで役に立ちます。体の免疫力の約7割は腸にあり、ウイルスや細菌などの病原菌に対する免疫力を強くするうえで効果的。女性の美肌と若返りにも役立つナイアシン、それに脳の若返りにも効果的な葉酸、骨を丈夫にするビタミンK、老化を防ぐビタミンEも含まれています。330

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