エルダー2021年4月号
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任意参加ではなく対象の労働者にとって参加する以外の選択肢が与えられないという効果を生んでおり、不参加に対する制裁や不利益の存在から、①や②の要素は事実上の強制として評価される根拠となっています。さらに、補充的な要素とは考えられますが、就業規則上に、明示的に義務づける根拠となる規定が存在していること(③の要素)も考慮されています。同じ会社で行われた就業時間外の活動においても、その結論が分かれており、就業時間外の活動に対する判断が容易ではないことを示しているといえるでしょう。勉強会に関する③の要素については、勉強会そのものを直接義務づける規定ではありませんが、使用者が、勉強会に参加させるための業務命令を発する根拠となる規定となっており、業務命令違反を理由とすれば懲戒処分などの実施が可能となるという労働者に対する不利益性とつながる要素になっています。類似するような抽象的な規定が定められている企業も多くあると思われますので、教育訓練に関する勉強会などの開催においては、このような規定の有無についても留意する必要があります。仮に、同様または類似の規定を就業規則に定めている企業において、労働時間に該当しないように就業時間外の勉強会を開催するためには、勉強会への参加が命令ではないこと高齢者に対する安全配慮義務1定年後の再雇用者など高齢者の雇用者数は年を追うごとに増加している傾向にありますが、高齢者に関しては、安全配慮義務に関して、特有の視点が必要と考えられています。厚生労働省は「労働者死傷病報告」などを基に、労働災害の発生状況の分析などの結果を公表していますが、2019(平成31/令を明確にしたうえで、または参加があくまでも任意であることを明確にしたうえで参加を募り、参加しなかった労働者への不利益措置などを実施しないといった要素に気をつけておく必要があります。和元)年の労働災害においては、全死傷者のうち60歳以上の死傷者数の割合が年々増加しており、その割合は26・8%に及んでいます。なかでも、墜落・転落災害の発生率が若年層に比べて高く、転倒災害については、女性で高くかつ高齢となるほど高くなる傾向があります。継続雇用延長にあたっての企業の課題を調べた調査※2によると、継続雇用導入前の企業においては、「社員の健康管理支援」が最も割合が多く(35・1%)、継続雇用延長後※2  (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構『継続雇用、本当のところ』(2018年)高齢者による労働災害の発生率は高く、通常の労働者以上に健康や体力への配慮を行う必要があります。雇用以外の方法による就労確保においても、労働契約に準じた安全配慮義務を尽くすことが望ましいでしょう。A高齢労働者や業務委託契約を結んだ高齢者への安全上の配慮について知りたい60歳や65歳を超える高齢者の雇用人数が増えているのですが、会社の安全管理などにおいて気をつけなければいけない事項はあるのでしょうか。雇用以外の方法で就労確保する場合は、どのような配慮が必要なのでしょうか。Q22021.438

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