エルダー2021年4月号
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の企業における課題としても、「社員の健康管理支援」は2番目に多い31・8%という結果となっています。これらの事情からしても、高齢者の労働状況に応じた健康管理を含む安全配慮義務への関心は高いといえそうです。このような状況に鑑みて、厚生労働省は、2020年3月に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(以下、「ガイドライン」)を公表しました。高齢者の就業における安全に対する配慮に関する留意点は、このガイドラインが参考になります。「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」の概要2ガイドラインは、安全衛生管理体制の確立など、職場環境の改善、高齢労働者の健康や体力の状況の把握、高齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応、安全衛生教育の項目から構成されています。安全管理体制の確立などについては、経営トップによる方針表明および体制整備をはじめとして、高齢者にとっての危険源の特定や洗い出しと防止対策の優先順位を検討することによるリスクアセスメントの実行など全社的な対応が求められています。高齢者向けの体制整備としての出発点となることから、高齢者の目線をふまえてリスクアセスメントを実行することは、非常に重要といえます。職場環境の改善としては、共通事項として、視力・明暗の差への対応、手すりや滑りやすい場所の防滑素材の採用など転倒防止に関する施策や、短時間勤務などの工夫や作業スピードへの配慮など体力の低下などの特性へ配慮した対策が中心に掲げられています。これらのなかでも、高齢労働者の健康や体力の状況の把握やそれに応じた対応の内容が特徴的であり、健康状況の把握として健康診断の実施から行い、体力の状況を把握するために体力チェックを継続的に行うよう努めることなどが求められています。健康や体力チェックの一例として、「フレイル」という筋力や認知機能などの心身の活力が低下して生活機能障害や要介護状態などの危険性が高くなった状態となっていないか確認する「フレイルチェック」と呼ばれる心身の健康状況を簡易に把握する方法や、厚生労働省による「転倒等リスク評価セルフチェック票」などが紹介されています。これらを利用しながら高齢労働者の健康状況および体力の状況を把握することが想定されており、参考になります。また、これらが把握できた際には、業務の軽減の要否、作業の転換、心身両面にわたる健康保持増進措置を検討することが想定されており、周囲の労働者においても高齢労働者に対する理解を深めるための教育や研修の実施なども必要とされています。雇用以外の創業支援等措置による場合3ガイドラインは、労働契約に基づく安全配慮義務の具体化ともいえるものであり、対象とされているのはあくまでも労働契約に基づき労務に従事する高齢労働者です。しかしながら、高年齢者等の雇用の安定に関する法律が改正され、「創業支援等措置」といったほかの事業主と業務委託契約を締結することや、社会貢献事業に従事する方法で、就労確保を行うことも許容されるようになります。これらの状況は労働契約に基づくものではないとしても、その就労においては高齢者の心身の状況への配慮が必要であることは共通しています。そのため、創業支援等措置を採用するために定める実施計画に安全衛生について記載しなければならず、厚生労働省が公表する指針(令2・10・30 厚労告351)においては、労働関係法令による保護の内容も勘案しつつ、委託業務の内容・性格に応じた適切な配慮を行うことが望ましいとされています。また、委託業務に起因する事故などにより被災したことを事業主が把握した場合には、ハローワークに報告することも望ましいとされており、労働契約法に基づく安全配慮義務や労働災害が発生した場合に準じた対応を心がける必要があるでしょう。エルダー39知っておきたい労働法AA&&Q

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