エルダー2021年4月号
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株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2021.442今回は「働き方改革」について取り上げます。働き方改革とは、日本人があたり前と思っていた働き方全般を見直すもので、人事領域にとどまらない幅広い内容を含んでいます。働き方改革の背景働き方改革は、成長戦略の一環として、安倍前内閣が強く推進していた施策の一つです。2016(平成28)年9月の「働き方改革実現会議」を皮切りに議論が重ねられ、実行に移すための通称「働き方改革関連法案」が2018年6月に成立、2019年4月1日以降、順次施行されています。この期間、働き方改革という用語はマスメディアなどを通して日々発信されていましたが、最近は落ち着きをみせつつあります。内閣が変わってトーンダウンとしたとみる向きもありますが、法律施行から2年近く経ち、具体的な実行段階に入っているからととらえた方がよさそうです。さて、なぜ働き方改革が推進されるようになったのでしょうか。この背景には「少子高齢化にともなう生産年齢人口の減少」が大きくかかわっています。本連載の第1回(2020年6月号)でも取り上げましたが、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」によると、生産活動の中心をになう15歳以上65歳未満の年齢層をさす「生産年齢人口」は1995年をピークに減少し続け、今後も減少傾向が続くと推定されています。また、労働者一人あたり、または労働1時間あたりで生み出す成果を示す「労働生産性」が日本は低いといわれています。例えば、日本の一人あたり労働生産性はOECD加盟国37か国中26位です(日本生産性本部「労働生産性の国際比較2020」)。このような状況を打破するために、従来の働き方では就労がむずかしかった方にも生産活動に参画してもらうことで人手不足の解消につなげ、無駄や負担を軽減することで生産性を上げていくのが働き方改革の大きな目的となります。働き方改革に関する人事面での取組みここからは人事面での取組みについて、「労働時間の制限」、「雇用の多様化」、「就業場所の多様化」の三つの観点で整理していきます。すでに本連載で取り上げた内容もかかわってきますが、おさらいの意味も含めて触れていきます。①労働時間の制限日本のこれまでの労働実態のなかで、長時間労働がかなり問題になっていました。働き過ぎによる過労死や健康への悪影響、また長時間労「働き方改革」第11回

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