エルダー2021年4月号
45/68

■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー43働をしにくい人材の就労機会の低下などです。これらの解決策として、働き方改革関連法により、企業に対して主に次のような対応が求められるようになりました。・ 時間外労働上限規制…月45時間、年360時間を原則とする。・ 年次有給休暇の取得…10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し取得時季を指定しての5日間の有給休暇付与を義務とする。このほか、「労働時間状況の把握義務化」や、勤務終了後に一定時間以上の休息時間を設ける「勤務間インターバルの努力義務化」などがあります。これらは労働時間の制限につながるものであり、実現するには無駄を排除するための業務プロセス見直しやIT化の推進など、生産性向上に向けた対応も必要になってきます。②雇用の多様化働くのは65歳までという年齢や、フルタイム正社員が雇用形態の基本といったような従来の認識よりも幅広く労働者を定義し、就業機会を増やすための取組みです。本連載で解説した高齢者の「雇用延長」や「限定社員」が該当します。また「最低賃金」の引上げや、いわゆる正規社員・非正規社員の不合理な待遇差の格差の是正といった「同一労働・同一賃金」もパートタイマー従業員などの一層の参画・活躍をよりうながす意味で、この取組みに含まれます。まだ本連載で触れていない施策としては、「副業・兼業」の推進が挙げられます。副業・兼業とは、主となる業務以外に収入を得る業務に従事することです。厚生労働省が2018年に公表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」にあるように、副業・兼業の形態は、 正社員、パート・アルバイト、会社役員、起業による自営業主などさまざまです。従来は副業・兼業を禁止する会社がほとんどでしたが、副業・兼業を通した従業員のスキル習得、収入の安定、優秀な人材の確保などメリットがあることから、解禁を実施・検討している企業は増えています。労働時間管理や健康管理面、機密保持などのクリアすべき課題は多くあるのですが、一つの会社・業務にとどまらず、複数の選択肢を持つことは、人生100年時代において働く意思があるかぎり働くための一つの有効な手段になるのではないかと筆者は考えています。③就業場所の多様化決められた一つの事業所に出社して働くのではなく、業務内容や生活スタイルに応じて最適な場所で働くようにできるのが就業場所の多様化です。それを実現するための手段が「テレワーク」です。在宅勤務のような使われ方もしますが、一般社団法人日本テレワーク協会によると「TELE=離れた所」と「WORK=働く」を合わせた造語ですので、場所は自宅とはかぎりません。労働時間管理のむずかしさや、コミュニケーション面、情報セキュリティの観点から普及はむずかしいといわれていましたが、2020年以降の新型コロナウイルス感染症対策の観点から一気に導入が進みました。働き方改革の文脈からテレワークをみると、通勤時間が短縮され、自宅で働くことも可能になることから、子育てや介護など家庭の事情がある方の就業を可能とします。また、転勤や単身赴任など会社の人事異動が家族を巻き込み負担になることが多かったのですが、実際に赴任地に行かなくてもIT機器やノウハウを応用して業務を行うことが可能なケースが増えてきました。テレワークの普及により従業員に求める評価軸も変わってきており、管理者や評価者が本人の働いている姿を実際に見ることができないため、高い成果やアウトプットを重視するようになってきています。これは効率的に成果を出せばよいという意識の改革にもつながり、働き方改革が目ざしている生産性向上に直結する流れともいえます。☆  ☆次回は「昇給とベースアップ」について取り上げる予定です。

元のページ  ../index.html#45

このブックを見る