エルダー2021年4月号
5/68

エルダー3業者が増えてきたのは事実です。しかしこれからは、労働力不足のもとで待遇の改善が進みそうですし、正社員の比率も高まる兆しが見えます。また、働き方が多様化し、短時間労働者が増えると思いますが、週20時間以上の短時間労働者を社会保険に加入させなければならない企業の規模要件を緩め、加入する労働者の月収要件を引き下げる法律改正も行われており、現役世代が減るほどには、加入者数は減らないでしょう。 さらに、2004年度から2017年度まで、毎年計画的に保険料率を引き上げたり、国民(基礎)年金の財源のうち税金でまかなう比率を3分の1から2分の1に高めたりする改正も行われました。―他方、支出面の給付水準はどう見直されていますか。 田村 少子高齢化は以前からわかっていたことなので、収支両面からさまざまな準備が行われてきました。給付の面で重要な改正は、2004年に導入された「マクロ経済スライド」です。これは、現役世代の減少や受給者の平均寿命の伸びを反映させて、毎年の受給額を自動的に調整する仕組みです。 本来の年金額は、賃金・物価の状況に合わせて改定されます。ここからスライド調整率※3を差し引いたのが、実際の改定額になります。例えば、本来の改定率がプラス2%で、スライド調整率が0・9%であれば、実際の年金額の改定率はプラス1・1%となります。 マクロ経済スライドによる給付水準調整は、物価・賃金の伸びがマイナスの場合は、その下落分は年金額を引き下げても、それを上回る引下げは行わないこととしているため、デフレ下では給付額抑制の効果が現れません。この制度が導入された後は、消費税増税による物価上昇があった2015年度しか発動されていませんでしたが、経済が好転した2019年度と2020年度は2年連続で発動されました。この調整が続けば、賃金・です。これは国立社会保障・人口問題研究所の資料などから私が計算した値です。昔はいまよりも引退年齢が早く、定年は55歳や60歳でした。また女性が外で働くことは一般的ではありませんでした。これからは働く高齢者や女性が増えるので、就業者数と非就業者数の比率はそれほど大きく変化しないのです。―高齢者や女性の就業者は増えていますが、非正規が多く、保険料収入はそれほど増えないのではありませんか。田村 これまで相対的に賃金の低い非正規就受給者数の増加が永遠に続くことはなく公的年金が破綻する心配はない※3 スライド調整率……公的年金全体の被保険者数の減少率(3年平均)に平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)を加えた率のこと

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る