エルダー2021年5月号
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エルダー11特集歴史に学ぶ高齢者雇用はじめに︱人事管理に大きな影響を与えた高年齢者雇用安定法の改正とは︱1企業の人事管理の基本的な枠組みは、労働関係の法律や政府の政策により規制されています。例えば法律によって、採用管理では募集や労働の契約の仕方、退職管理については、定年年齢や解雇の仕方にかかわる基本ルールが決められています。特に、個々の労働者と使用者との雇用関係を規制し、労働者が働くうえでの条件の最低基準を設定している高年齢者雇用安定法による定年年齢の規制の変更は、退職管理だけでなく、人事管理のあり方に大きな影響を及ぼしています。これまでに、企業の人事管理のあり方に大きな影響を与えた高年齢者雇用安定法の改正は二つあります。一つは、1971(昭和46)年に制定された「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」が1986年に抜本改正され(現在の「高年齢者雇用安定法」に改称)、60歳定年制度の努力義務化が定められたことです。この当時の定年年齢の主流は55歳であり、企業は法改正により、定年年齢の引上げを迫られるようになりました。その後、同法は1994(平成6)年に改正され、1998年から60歳定年制が義務化されました。これらの改正を「60歳への定年延長」と呼ぶこととします。もう一つは、2000年の改正です。この改正は、65歳未満の定年を定めている事業主に対して、雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するために、①定年年齢の引上げ、②定年制の廃止、③継続雇用制度の、いずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)をとることが義務付けられました。さらに、2012年の改正では、希望者全員を65歳まで雇用する義務が課され、働く側が希望すれば、65歳まで雇用が維持されるようになりました。このことは実質的に65歳定年制が義務化されたことを意味しているともいえます。これらの改正を「みなし65歳への定年延長」と呼ぶこととします。本稿では、「60歳への定年延長」および「みなし65歳への定年延長」が企業の人事管理にどのような変化をもたらしたかについて、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(旧・(独)高齢・障害者雇用支援機構および旧・(財)高年齢者雇用開発協会)の調査研究を用いて、紹介します。高年齢者雇用安定法の改正と企業の人事管理の対応2(1)「60歳への定年延長」と企業の人事管理の対応(注1)人事管理を設計するうえで最も重要な点は、玉川大学経営学部教授 大木栄一解 説企業の高年齢者雇用安定法への対応と実態

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