エルダー2021年5月号
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2021.512社員を「どのような仕事に配置して」(「配置の管理」)、働きぶりに対応して社員に対して「どのような報酬を与えるのか」(「賃金等の報酬管理」)、配置の管理と報酬管理の基盤となっている「社員区分制度」(社員を異なる人事管理を適用する複数のグループに分ける制度)および「社員格付け制度」(社内の「偉さ」によって社員をランキングする制度)、の三つです(図表1)。「どのような仕事に配置して」の配置の管理の面では、第一に、一定年齢(55歳など旧定年近くが多い)に達したときに役割を解く「役職定年制」あるいは管理職の役職を一定期間で改選する「役職任期制」を導入・拡充する企業が増えてきました。その理由は、役職者の在任期間が定年延長とともに延び、中堅・若手社員の昇進が遅れ、人事の停滞を招くからです。第二に、「どこに異動させるのか」については、異動範囲が、企業内から関連会社などの企業グループ内へ広がったことです。その場合の異動の形態は社員の身分を維持したままで、他社の指揮命令のもとで、業務に従事する異動である「出向」が活用されるようになりました。出向には複数のタイプがありますが、定年延長との関係でみると、中高年ホワイトカラーを出向させる排出型出向が活発に行われるようになり、雇用を守りながら、後進に道を譲り、これまで蓄積した経験と能力を活かすためにも主要な異動政策になりました。第三に、定年延長によって雇用期間を延ばすことを制度化する一方、主に中高年社員にできるだけ早い時期に企業から退職することをすすめる「早期退職優遇制度」を導入しました。この制度は、早期退職は自己都合退職ですが、会社都合扱いの退職金を適用し、それに加えて、退職金に特別割増をつけるという方法がとられています。次に、報酬管理のなかでも最も重要である基本給についてみると、人件費コストを抑制するために、旧定年年齢に達した社員の定期昇給の逓てい減げんや停止、あるいはベア配分率の低下や停止を行うなど、ある一定年齢から基本給が減額するような仕組みを導入しました。加えて、退職金が一時金として多額の資金が一時的に流出することを避けるために、年金化して毎年一定額を積み立てるように変更しました。さらに、配置の管理と報酬管理の基盤となっている「社員格付け制度」(主に、資格制度)を導入・整備した企業が多く見られます。他方、「社員区分制度」については、昇進やキャリアの多元化を図るために「専門職制度」の導入・再編が行われました。このことは統合化されていた社員区分を細分化する方向で再編する動きでもあり、複線型人事制度などと呼ばれ、ホワイトカラーを中心にして社員区分の再編成を進めるきっかけをつくることになりました。また、導入・再編された「専門職制度」は日本企業で多く導入されている格付け制度の一形態である「職能資格制度」を補完する制度であり、同等の能力があると評価され、同一の資格に格付けされれば、管理職であろうと専門職であろうと60歳以上の定年制実施している実施していない基盤システム(社員区分制度・社員格付け制度)専門職制度資格制度37.0 70.3 25.6 59.3 配置・異動役職定年制度早期退職優遇制度34.8 32.8 13.6 13.6 報酬制度年功賃金の見直し退職金算定方式の見直し退職金の年金化53.8 47.7 63.2 34.8 26.6 57.2 図表1 60歳以上定年実施の有無別による人事管理諸施策の実施状況出典:(財)高年齢者雇用開発協会(1985)『高齢化社会における人事管理の展望に関する調査研究報告』(単位:%)

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