エルダー2021年5月号
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特集歴史に学ぶ高齢者雇用エルダー13給与は同じになるという特徴を持っています。(2)「みなし65歳への定年延長」と企業の人事管理の対応(注2)定年制の導入状況を厚生労働省『平成29年就労条件総合調査』からみると、定年の定めのない企業は4・5%、一律定年制を導入する企業のうち定年年齢を60歳に定める企業は79・3%、また65歳以上とする企業は17・8%を占めています。65歳までの雇用確保は、多くの企業において、定年年齢を60歳とし、65歳までの継続雇用制度(「雇用確保措置企業」)の導入によって実現されています。継続雇用制度の場合は、雇用契約を1年ごとの更新とする非正規社員の雇用形態とするケースが多くなっています。となると、「みなし65歳への定年延長」にともなう人事管理の対応は、60歳代前半層(「高齢社員」)の人事管理の各領域において、どのような点が「現役正社員」を対象とした人事管理と連続性があるのか、あるいは、連続性がないのかをみることが必要です(図表2)。「どのような仕事に配置して」の配置の管理の面では、定年制の状況にかかわらず、役職者を除き現職継続が原則です。さらに「どのような就業形態のもとで」の労働時間管理の面では、65歳以上の定年企業では現役正社員継続型が、他方、雇用確保措置企業では、所定内労働時間については現役正社員継続型が、残業手当がともなう所定外労働時間(残業時間)については現役正社員非継続型がとられています。このように労働給付にかかわる配置管理と労働時間管理では現役正社員と同じ、あるいはそれに近い雇用管理がとられているにもかかわらず、報酬管理では現役正社員とは異なる扱いをする傾向が強くなっています。さらに、そのなかにあって全体的にみると、65歳以上の定年企業は現役正社員制度に近く(「統合型の人事管理」)、雇用確保措置企業は現役正社員制度から遠い(「分離型の人事管理」)存在になります。報酬管理の基盤となっている「社員区分制度」および「社員格付け制度」についてみると、定年制の状況にかかわらず、高齢社員を複数にグループ分けして管理する(「社員区分制度」を導入している)企業は少なく、特に、雇用確保措置企業ではグループ分けを行っている企業であっても現役正社員制度とは異なる基準でグループ分けを行っています。同様に、「社員格付け制度」を整備して、「仕事」や「能力」などに対応して高齢社員を複数のランクに格付けるという企業は定年制の状況にかかわらず、雇用確保措置企業継続雇用66歳以上企業65歳以上の定年企業基盤システム社員格付け制度社員区分制度1.37 1.521.36 1.55 1.73 1.93 配置・異動役職の継続状況仕事内容の継続性1.72 3.23 1.82 3.33 2.39 3.65 就労条件(労働時間)所定労働時間所定外労働時間3.66 2.38 3.59 2.673.75 3.40 評価人事評価2.15 2.33 3.03 報酬制度基本給の決め方昇給賞与・一時金昇格(昇進)2.31 1.63 2.18 1.75 2.56 1.88 2.39 1.84 3.49 2.71 3.32 2.68 福利厚生退職金・慰労金の決め方1.351.59 3.40図表2 定年制の状況別にみた高齢社員の人事管理:現役正社員の人事管理との継続度出典:(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(2018)『継続雇用制度の現状と制度進化―「60歳以降の社員に関する人事管理に関するアンケート調査」結果より』※ 表は「高齢社員に適用される人事管理」と「現役正社員に適用される人事管理」との継続度を測定している。※ 2.5点よりも大きい場合、「高齢社員の人事管理」が現役正社員と類似する傾向(継続性が高い)にあり、2.5点よりも小さい場合には、異なる(継続性が低い)傾向にあると判断することができる。詳しい得点の計算方式については、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(2018)『継続雇用制度の現状と制度進化-「60歳以降の社員に関する人事管理に関するアンケート調査」結果より』25頁を参照。(単位:点)

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