エルダー2021年5月号
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特集歴史に学ぶ高齢者雇用エルダー17006年施行)の高年齢者雇用安定法の改正がある。健康面などの条件を満たした希望者は嘱託社員として65歳まで働けるようにした。▪2011年〈定年の段階的引上げを決定〉2011年には、2013年施行の改正高年齢者雇用安定法を見据え、年金支給開始年齢に合わせて定年年齢を3年ごとに65歳まで段階的に引き上げることを決定した。2013年に61歳、2016年に62歳……と引き上げていき、2025年に65歳とする計画だった。▪2012年〈48~60歳の処遇を改善〉実際に定年が引き上げられる前年の2012年4月、48~60歳の賃金制度を見直した。中高年層のモチベーションの維持・向上がねらいだ。同社の基本給は、能力給と年齢給で構成される。従前の制度では、47歳で年齢給が頭打ちとなり、さらに55歳以降は、考課によっては賃金が下がる仕組みだったが、考課次第で60歳まで昇給することも可能な制度とした。赤沼氏は、「給与ダウンは社員にとって大きな影響があります。そこをどうやってモチベーションダウンさせないようにするか、という観点で制度改定しました」と説明する。▪2017年〈65歳定年を前倒し実施、70歳までの継続雇用制度も導入〉そして、2013年に段階的な定年引上げがスタートし、2025年に65歳と引き上げていく予定だったが、2017年4月、前倒しで定年を65歳に引き上げた。また、定年後70歳までの継続雇用制度を導入した。それ以前は、65歳以降の雇用制度はなく、会社として残ってほしい人材と個別に契約していたが、シニアスタッフ(嘱託社員)として1年契約で最長70歳まで継続雇用することを制度化した。健康や能力の基準を満たしていることが条件となるが、厳しく絞り込む意図はなく、基本的に本人の意思が尊重される。これらの改定の背景には、少子高齢化により人材の一層の有効活用が必要になると見込まれることがある。また、現在の年齢別人員構成では50代が多く、この先、バブル期に採用した層が60代を迎える。定年到達者が少ないうちに実施したほうが混乱が少なく、課題が生じても見直す余裕があると判断したことも理由の一つである。「今後、人手不足で採用がむずかしくなることが想定されるので、そこに早く手を打ちたいという考えがありました。ベテランでも能力・意欲にあふれ、健康で働いている社員が増えているので、そのニーズにも応えられます。経営層からも、『どうせやるのであれば、対象者が少ないうちに先んじて実施し、課題をあぶり出したほうがよい』と後押しがありました」と赤沼氏はいう。なお、65歳以降のシニアスタッフの働き方については、通常勤務のほか、短時間勤務や短日数勤務も可能な制度となっているが、最近は体力も気力もあってまだまだ働きたいという人が多く、全体の8割は通常勤務である。▪2018年〈60~65歳の処遇を改善〉65歳への定年延長から1年が経過したばかりだったが、2018年4月に、60~65歳の処遇を再度見直した。2017年に定年を延長した際の処遇制度は、60歳以降、毎年10%ずつ給与を漸減させていき、65歳時には60歳時の50%程度となる仕組みだった。65歳までの5年間の平均でみると60歳時の70%程度の水準となる。しかし、60歳以降も担当する職務や働き方が変わらないにもかかわらず給与が下がっていくことに対するモチベーションダウンが想定以上に大きく、労働組合からの要望もあり、見直しを決めた。「60歳以降も、微増ではありますが昇給も可能な仕組みに改めました。雇用形態も同じですので、〝60歳〟という区切りはなくなりつつあります」と赤沼氏はいう。なお、66歳以降は、職務内容に応じて4段階に分けて給与水準を再設定する。職務給に近い性格といえる。賞与は業績連動型で、個人の考

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