エルダー2021年5月号
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特集歴史に学ぶ高齢者雇用エルダー19をつくる必要があります。一方、会社としては、65歳以降の働き方や働く内容をしっかり見えるようにしていくこと。そうしないと、将来を見据えることができません。そして、組織としてしてほしいこと、本人のできること、やりたいことの三つの円を大きくしていき、重なる部分を広げていくことが大切です」(赤沼氏)人事部人事サービス課長の佐藤誠氏もこれに同意し、「やはり、そのときになってから考えるのはむずかしいので、早くからキャリアについて考える機会を持たせることが重要です。この2月には経営層を対象にキャリアについて考える研修を実施し、経営職から意識を変えていく取組みを始めています」と明かす。人件費は「投資」という考え方でやりがいを高めながら取り組んでいく同社の高齢者雇用の取組みは、法律の後追いではなく、先を見据え、世の中に先んじて行われてきた。そして、運用のなかで課題を明らかにし、改善してきたことで、今後の労働力不足や60歳以上の社員の増加に備えができてきた。「65歳定年導入時は、本当に65歳、70歳まで働けるのかという不安もありましたが、4年経ってみると65歳定年があたり前になり、その後の再雇用についても、戦力ダウンすることなく運用できています。やってみると、まだまだ働ける方が多く、年齢に対する思い込みがあったのかなと感じます」(赤沼氏)世の中の先を行く取組みができたのは、人件費の面で会社の持ち出しが増える制度・施策に対しても経営トップの理解があったことが大きい。赤沼氏は、「日置電機には、人件費は『投資』という考え方があります。人を大事にしながら、戦力としてできるだけ長く健康に働いてもらえるように投資していくという考え方が経営のベースになっていますので、人事としてもやりやすく、後押ししてもらえました」という。一方で、今後に向けて取り組むべき課題も残っていると赤沼氏は話す。「専門職は手に職を持っていますが、ジェネラリストといわれる人たちが役職定年、もしくは再雇用の嘱託社員になった後のキャリア設計を促進していかなければなりません。また、加齢による健康リスクへの対応も必要です。そして何より、売上げを伸ばしていくことが重要です。今後、60歳に達する年齢層が増えていき、試算では2032年に人件費がピークに達します。もちろんシミュレーションはしていますが、売上げが伸びていくことが大前提ですので、いかに売上げを伸ばし、健全な財務体質を維持していくかが重要と考えています」(赤沼氏)同社の高齢者雇用の取組みに一貫しているのは、社員のやりがいやモチベーションを高め、会社の戦力として活躍をうながしていこうという考え方だ。「キーワードは『やりがい』や『働きがい』。ただの雇用維持になっては、会社にとっても本人にとってもよくありません。仕組みは整えましたが、本当にやりがいにつながっていくかはこれからです。今後もいろいろな課題が出てくると思いますので、改善しながら運用していくことが、これからの人事の大きな仕事だと思います」(赤沼氏)赤沼徹也氏(現・日置フォレストプラザ株式会社代表取締役社長/右)と、佐藤誠人事部人事サービス課長(左)

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