エルダー2021年5月号
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2021.522社長)若手を管理職に登用するのは、若い時期から管理職として経営にたずさわることで、事業全般を学んでもらう意図があるという。同社では、1人の社員が複数の業務をこなすことができる「多能工」の存在も強みであり、設計から組立まで全工程を自社で行う体制が確立されたのは、多能工化を進めたことが大きいという。入社後の社員は、溶接や板金、機械加工、組立など多様な仕事を経験する。とはいえ、決まった人材育成の仕組みはなく、得意分野や向き不向きなどをみながら、2カ月で部門を異動する場合もあれば、一つの部門でじっくり育てる場合もあるなど、育て方は一人ひとり異なるという。また、若手には海外も含めて外へ出て行く機会をつくり、新しいことを吸収して、必要に応じて新たなやり方を提案してほしいと求めている。一方、必要な技術は日々進化しているため、ベテランに対しても技術を追求して深めること、また、よい点はよい意味で変化させないことへの努力を求める。ベテランの持ち味は、特化した技に加えて、目立たない部分ではあっても作業の進捗状況を左右するような判断が的確にできたり、予定外の事態発生に対する対応が迅速にできるなどマニュアル化できないことが多く、いざというときに力を発揮して周りを牽引するための人格の成長も期待している。「一流の製品は、一流の人格から」。創業時から受け継がれているこのモットーも西島社長は大切にして、若手、ベテランのそれぞれに日々自己研けん鑽さんをうながしている。働きがいを生きがいに勤続50年・60年を表彰安全衛生にかかわることは必要に応じて会社の判断で即実行するが、それ以外のことは現場の声を聞きながら、従来の方法にとらわれず、臨機応変に変えている。「ルール先行ではなく、よりよい職場環境づくりが大切」と西島社長は考えているからだ。しかし、幅広い世代が働く現場では、ときにコミュニケーションがうまくいかなかったり、衝突したりすることもあり、臨機応変にやり方を変えるのは決してたやすいことではない。問題が生じたときは西島社長が間に入り、何が問題であるのかを公にして話し合い、方向性を見出していくという。それが実現できているのは、先代の姿勢にならい、西島社長が毎日ほぼすべての社員に声をかけ、信頼関係を築いているからだ。「調子はどうだ」といったあいまいな言葉をかけるのではなく、仕事内容や役割、家族のことなど短い会話ながらもその社員ならではの話をするという。西島社長は毎日こうした会話を続けることで社員を理解することに努め、その社員に適した人材育成につなげている。また、仕事のやり方に対する意見や不満を拾いあげ、それが職場にとってプラスに働くように対応している。コロナ禍の現在は中断しているが、「25歳以下」、「65歳以上」といったグループごとに、西島社長と一杯飲みながら話すという席を設けるなどし西島豊代表取締役社長

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