エルダー2021年5月号
25/68

特集歴史に学ぶ高齢者雇用エルダー23て、ざっくばらんな意見交換の機会もつくっている。「技を磨いて長く社会で活躍し、次の世代に継承してほしい。そのためには仕事を好きになってもらい、働きがいが生きがいに結びつく、そうした職場環境をつくることが大切だと思います。生活と仕事はかけ離れたものではなく、また、人生はつながっていますから、それぞれのライフステージに応じて、社員が最大限の責任を果たせる役割を与えていく、そのことが私の仕事だと考えています」(西島社長)こうした考え方も創業から100年近くになる同社の歴史のなかで醸成されてきたもので、西島社長は「ルールや仕組みは変えても、先人への感謝の気持ちと人を大事にする企業であることへの思いは変わりません」と切々と語る。長い歴史のなかでは、現役のまま亡くなった社員もいる。入院や治療が必要になって「フルに働けないから迷惑をかけてしまう」といわれても、西島社長は「戻ってきてください」といい、待つという。そして、本人に働く意思があるかぎり、仕事と両立できる方法を考えていく。「当社で働き、世話になっているのですからあたり前のこと」と西島社長。同社があるのは、これまで働いてきた人たち、現在いる社員のおかげだと常に感謝を忘れない。その思いを形にして、勤続50年、勤続60年の表彰制度を設けている。記念品として純金の「勤メダル」を贈るそうだ。表彰を受けた社員の50年倶楽部、60年倶楽部という集まりもあり、元社員も招いて食事を楽しむという。社員とは一生のつき合いを続けている。高年齢者雇用安定法の改正によりこの4月から70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となったことについて、西島社長にたずねると、「『働けるシニアを活かす』のではなく、何歳であっても『その人の力を活かす』という気持ちが大切ではないかと思います」と返ってきた。技術で世界に貢献するために人づくりに全力を注ぐ今年3月に発表された「第11回日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で、西島株式会社は審査委員会特別賞を受賞した。これを受けて西島社長は、「『人』を中心に技術で世界に貢献できる企業としてモノづくり、人づくりに全力を注いできた当社にとって、たいへんうれしい受賞です。お客さま、パートナー、そして社員とその家族、当社にかかわるすべての人に寄り添う企業として、さらなる挑戦を続けます」と受賞の喜びと新たな決意を述べている。この決意にもある通り、同社では社員の安心・安全は家族を含めてのことと考え、家族を招いて楽しい時間をともに過ごす家族会を開催したり、常に家族のことを気遣い、コロナ禍でマスクやトイレットペーパーが品薄状態になった昨年は、社員の家族の分まで会社の備蓄品を配布した。「目先の損得でなく、善悪で判断して、正しいと思うことをしたい。そうしないと、しっぺ返しがくるような気がします」と、謙虚な姿勢で信念を語る西島社長。数年前から取り組んでいる働き方改革では、「CAM」というソフトを用いて設計のプログラムを作成する仕事に女性を採用し、成功しているという。生産性が向上しているうえ、家庭との両立もしやすい時間の融通が利く作業があるため、短時間勤務の社員を増やし、働きやすく、やりがいを感じられる職場づくりをさらに進めていきたいと考えている。3年後の2024年には創業100周年を迎え、敷地内に新工場の建設を計画しているという。事業の今後について西島社長は、「企業規模は現在が最大と考えています。これからも全社員が一丸となれるよう信頼関係を大切にしていきたいです」と話す。人を大切する姿勢を貫いて100年。多様な人材が活躍する同社は、時代の先端を歩み続けている。

元のページ  ../index.html#25

このブックを見る