エルダー2021年5月号
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特集歴史に学ぶ高齢者雇用エルダー25公的年金の支給開始年齢多くの人にとって、公的年金は、仕事を引退した後の大切な収入源となります(国によって、所得代替率はさまざまです)。そのため、仕事の引退時期について考える際、公的年金の支給開始年齢は重要なポイントです。日本の年金受給開始年齢は、段階的に現在の65歳に引き上げられてきました。他国をみても、年金支給開始年齢は引き上げる傾向にあります。図表2で太字の国は、現在年金支給開始年齢の引き上げを行っている国です。興味深い例としては、フィンランド、ギリシャ、ポルトガル、デンマーク、イタリア、スロバキアなどの国では、年金支給開始年齢を平均寿命と連動させる仕組みの導入を検討しています。一方、公的年金の支給開始年齢は、社会や政治にとって、とてもセンシティブな問題となっています。例えば、フランスでは、新聞などで報じられていたように、政府が年金支給開始年齢の引上げを提案した際、暴動が起きました。また、香港では、公的年金の早期受取の廃止を目ざしていましたが、多くの抵抗やメディアの注目もあり、この案は取り下げられました。実際の引退年齢経済協力開発機構(OECD)加盟国における仕事を引退する年齢(引退年齢)の実態調査は、1970年までさかのぼることができます。図表3が示す通り、統計のある1970年以降20〜30年の間、平均引退年齢は一様に下がってきましたが、一転して、90年代中旬からアングロ・サクソン諸国で上昇し始め、西ヨーロッパでも近年上昇し始めました。しかし、若年世代にかかる経済的負担や、引退後の収入を考えると、人々はさらに高年齢になるまで長く働き続ける必要があります。日本はOECD参加国の中で、高齢者の人口指数が一番高い国です。2017年には、65歳以上の50人強を、20歳から64歳までの100人が支えている状況です。この指数は、2050年には79%まで上昇すると予想されています。日本での急速な高齢化は、生活水準の向上や、社会保障の財政維持の、大きな障壁となっています。世界でのニーズ今後、人々がより高年齢まで長く働き続けることが求められますが、そのためには、次の3点が重要であると考えます。1. 長く働き続けることを推奨する環境をつくること図表2 世界各国の公的年金支給開始年齢国66歳以上アメリカ、イスラエル(男性)、イタリア、オランダ、ギリシャ、ドイツ、フランス、ポルトガル65歳アルゼンチン(男性)、イギリス、オーストラリア、オーストリア(男性)、カナダ、クロアチア(男性)、シンガポール、スイス(男性)、スペイン、チリ(男性)、デンマーク、日本、ニュージーランド、フィンランド、ブラジル(男性)、ベルギー、ポーランド(男性)、メキシコ61~64歳イスラエル(女性)、韓国、クロアチア(女性)、コロンビア(男性)、スイス(女性)、ノルウェー、ハンガリー、ロシア(男性)60歳以下UAE、アルゼンチン(女性)、インド、インドネシア、ウクライナ、ウズベキスタン、ウルグアイ、エジプト、オーストリア(女性)、カタール、コロンビア(女性)、サウジアラビア、タイ、中国、チリ(女性)、トルコ、フィリピン、ブラジル(女性)、ベトナム、ポーランド(女性)、マレーシア、ロシア(女性)出典: 「ウイリス・タワーズワトソン人事コンサルティング ニュースレター2019年6月号」69(歳)6867666564636261601970197319761979198219851988199119941997200020032006200920122015(年)MenWomen図表3 OECD諸国の実際の引退年齢出典:OECD Database on Average Effective Retirement Age

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