エルダー2021年5月号
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エルダー27FOOD日本史にみる長寿食食文化史研究家● 永山久夫新茶とトッピンシャン老化や病気を防ぐカテキン茶所では茶摘みが始まり、新茶の出回るさわやかな季節となりました。新茶は香りや味もよく、ビタミンCもたっぷり含まれています。日差しも強くなり、肌の老化が気になる季節ですが、お茶に多い抗酸化成分のカテキンが、肌の酸化、つまり老化からガードしてくれます。カテキンは、体内で老化や病気の原因となる酸化(細胞のサビ)を抑制する働きもあり、最近では免疫力の向上や感染症の予防でもその効果が認められています。体内に入り込んだインフルエンザウイルスの増殖もある程度防ぐ働きがあるそうです。カテキンは渋味や苦味の成分で、玉露などの高級茶よりも、普通の煎茶により多く含まれています。カテキンに次ぐお茶の有効成分としてテアニンがあります。甘味が強く、とろりとしたうまみの成分で、ストレスを解消するリラックス効果があり、記憶力や学習能力を高める成分としても脚光を浴びています。風邪の予防や日焼けから肌を守るビタミンCもたっぷりです。新茶とごま味噌ずいずいずっころばし ごまみそずい 茶ちゃ壷つぼに追われてトッピンシャンよく知られたわらべうたの一節です。「茶壷」の文字があるように、江戸の将軍家へ献上する宇治茶を運ぶ「お茶壺道中」を、ユーモラスに織り込んだものといわれています。道中、一行は「下にー、下にー」と声を上げながら進みます。沿道の民衆は、少しでも粗略な態度を見せると容赦なく罰せられますから、その通過をじっと待つほかありません。お茶壺さまが近づくと、子どもたちは戸を「トッピンシャン」と閉めて、台所から「ごま味噌」を取り出し、指先にとってなめながら息をこらしている、というのが歌の内容です。当時、甘味のついたごま味噌は、ご飯や酒の肴の“常備食”であり、子どもたちの大好物でした。特にごま味噌おにぎりは、お年寄りから子どもまで大好きな農繫期のおやつであり、お茶を飲みながら田んぼの土手で頬ばっていたようです。331

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