エルダー2021年5月号
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2021.540はじめに1前回は、高齢者の労働災害として小売業の転倒災害を取り上げ、さまざまな災害事例と災害防止対策を紹介しました。今回は、第3次産業において小売業と並び転倒災害が多発している社会福祉施設を取り上げ、転倒災害事例をみていきます。社会福祉施設の労働災害発生状況2社会福祉施設には、老人福祉施設、障害者支援施設、保育園などがあります。2008(平成20)年から2019(平成31・令和元)年まで、わが国の社会福祉施設の休業4日以上死傷災害発生件数の推移をみると、2019年は1万45人と2008年の4829人と比べ、108・0%増と大幅に増加しています(図表1)。この間、従事者数が2019年(常勤換算従事者数116万6919人)は2008年(同78万2681人)と比べ49・1%増になっていることも加え、労働災害が大幅増になっています。社会福祉施設の労働災害を災害の種類別(事故の型別)にみると、転倒災害が最も多く、30%超を占めています(図表2)。社会福祉施設のなかで多くを占める老人福祉施設では、要介護者の転倒を防止するため、要介護者の移動スペースは段差をなくすなどバリアフリー化が施され、また、床が濡れれば即座に拭き取りが行われています。それにもかかわらず、職場で転倒災害が多発しています。老人福祉施設の従業員を対象としたアンケート調査では、社会福祉施設で転倒災害が多発していることを知らないとの回答(「あまりよく※ 前回までの内容は、ホームページでご覧になれます。エルダー 高齢社員のための安全職場づくり検索 生涯現役時代を迎え、60歳、65歳を超えて、より長く活躍してもらうためには、企業が職場における安心・安全を確保し、高齢社員が働きやすい職場環境を整えることが欠かせません。本連載では、高齢者の特性を考慮した〝エイジフレンドリー〞な職場の実現方法について、職場の安全管理に詳しい高木元也先生が解説します。労働安全衛生総合研究所 高木 元也―エイジフレンドリーな職場をつくる―高齢社員のための安全職場づくり高齢者の労働災害防止対策―転倒災害防止その2―第5回

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