エルダー2021年5月号
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2021.548高齢者の9割超が「働きたい」「宝くじがあたったら仕事を辞める」というのは宝くじを買ったときに多くの人が思うことですが、働かなくてよいお金があれば本当に仕事を辞めるかというと、そうではないようです。2020(令和2)年度の『高齢社会白書』によると、経済的な暮らし向きに心配がないと感じる60歳以上は74・1%となっています。一方で、図表にあるように何歳ごろまで収入をともなう仕事をしたいかという問いに対しては、約90%の人が高齢期でも働きたいと回答しています。ほかの調査でも職業、年齢、文化の違いを超えて、最大95%の人が、経済的な理由がなくても仕事を続けると答えています。高齢社員のモチベーション働く理由は、人生を通して変わります。お金がなければ生きてはいけませんが、子どもの教育費や住宅ローンなどの支出がなくなると、働く理由として金銭的理由は小さくなります。逆に仕事の内容や役割に意味を見出すことが、高齢期でも仕事に従事する大きなモチベーションとなってきます。これまでの研究は、高齢社員のモチベーションを高めるためにいくつかの方法を提案しています。例えば、高齢社員が下の世代のメンターとして、経験に基づいた知識の共有を行ったり相談にのるといったことです。これは経験が乏しい若い社員にとって有益であると同時に、高齢社員にとってはこれまでの仕事をふり返り、その成果を次の世代に引き継ぐことができ、自分の仕事の意味を見出すことにもつながります。また、高齢社員の多くは「実際の年齢より自分は若い」と思う傾向があり、この傾向は最大で20歳あるといわれています。加えて、自分が若いと思っている社員の仕事のパフォーマンス020406080100%65歳くらいまで70歳くらいまで75歳くらいまで80歳くらいまで働けるうちはいつまでも仕事をしたいと思わない不明・無回答25.6%11.6%23.4%19.3%7.6%36.7%0.6%0.8%21.7%11.9%59.0%87.0%4.8%20.6%13.6%1.9%※ 調査対象は、全国の60歳以上の男女全体収入のある仕事をしている者出典:内閣府「高齢者の経済生活に関する調査」(令和元年度)図表  あなたは、何歳ごろまで収入をともなう仕事をしたいですか 高年齢者雇用安定法の改正により就業期間の延伸が見込まれるなかで、高齢者が活き活きと働ける環境を整えていくためには、これまで以上に高齢者に対する理解を深めることが欠かせません。そこで本稿では、高齢者の内面、〝こころ〞に焦点を当て、その変化や特性を解説します(編集部)。心理学高齢社員の―加齢で〝こころ〞はどう変わるのか―増本 康平神戸大学大学院人間発達環境学研究科 准教授 高齢でも働くために必要なこと最終回

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