エルダー2021年5月号
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株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2021.550今回は、「昇給とベースアップ」について取り上げます。4月分から給与が上がる会社が多く、マスメディアなどでも特徴的な業界や会社の動向が伝えられるなど、人事的には春の〝季語〞といってもよいくらいの用語といえます。昇給とベースアップの違い給与を上げることを一般的に「賃上げ」と呼びます。これは、給与に該当する呼び名である〝賃金を上げること〞に由来しています。この賃上げですが、大きく「昇給」と「ベースアップ」に分類されます。この二つの用語は混同して使われることがありますが、目的も方法も異なるものですので、違いを明確にしながら解説したいと思います。①昇給「昇給」は、定められた条件に該当する場合に給与が上がることをさします。「定期昇給」という形で耳にすることが多いかもしれません。略して「定てい昇しょう」と呼び、この場合は毎年給与が上がることをさします。昇給の方法や実施期間・時期などは会社が自由に定められます。多くの会社が新事業年度を4月に開始する関係で4月給与分から昇給を実施していますが、10月に実施している会社や、数年に一度しか実施しない会社もあります。昇給の代表的な方法について取り上げます。かつては、年齢に応じた生活の支援や長期勤続に対する動機づけを目的に、年齢や勤続年数が1年上がるごとに給与を上げる「年齢給」や「勤続給」による昇給を実施している会社が主流でした。この場合は、同じ年齢・勤続年数であれば、同額の昇給をすることになります。しかし、これらの方法を採用することは、給与の年功的な上昇につながることになります。そこで、年功を薄めようとする会社は個々人の能力の伸びに応じて昇給額を設定する「能力給」による昇給や評価結果によって基本給を増減させる方法に切り替えています。この場合、同じ年齢・勤続年数であっても、能力や評価によって昇給が高い人と低い人にばらつくことになります。優秀な人材の意欲の向上を主な目的とした昇給といえます。②ベースアップ「ベースアップ」は、社員の給与水準全体を一律に引き上げることをさします。略して「ベア」と呼びます。このベアとは何かを理解するために図表を見てください。現水準(①)があります。例えば、2000円ベースアップといった場合には、人事制度上で給与支給額を定めている「給与テーブル」全体に2000円加算し「昇給とベースアップ」第12回

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