エルダー2021年5月号
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特別寄稿2021.552はじめに1パーソル総合研究所では、シニア人材に関する課題感や施策の実態を明らかにするために企業規模100名以上の人事戦略・企画、人事管理の動向を把握している者(経営層・経営企画・人事・総務など)約800名を対象に、調査・分析を実施しました。70歳就労機会確保の実態270歳雇用確保の施策としては「定年後再雇用」の割合が「実施している」と「検討している」を合わせると86・1%を占め、再雇用制度が最も有力な選択肢です。一方で、「定年制度の廃止」は「実施している」と「検討している」を合わせても30%台に留まっています。また「NPO活動へのサポート(社会貢献活動支援)や起業支援」は「実施している」と「検討している」を合わせても20%台となっています。これをみるかぎりは再雇用制度以外の雇用措置施策については多くの企業で具体化が進んでいないことがうかがえます。シニア人材における活躍・課題の状況3上位は「高い専門性の発揮」、「取引先や人脈の伝承」、「後進の育成」となっています。これらの項目はベテラン社員に期待される内容であり、ねらいに沿った活躍ができているようにみえます。一方その割合でみると、「高い専門性の発揮」35・5%、「取引先や人脈の伝承」31・1%、「後進の育成」30・9%と半数に満たない割合であり、半数以上が期待に沿った活躍ができていない状況です。なかでも、「自律的なキャリア構築」、「新たな仕事に対するチャレンジ」は下位であり、期待に応えているとする割合も2割を下回っています。70歳就労時代においては、異なる仕事での活躍、多様なキャリア選択を行っていくことが求められますが、キャリア自律や多様な仕事での活躍という観点で大きな課題があるといえます。実際に課題を持つ企業は49・9%となっており、5年以内に課題になると回答した企業も合わせると割合は75・8%となっています。規模別にみると大きくなるほど課題感が強くなり、業種別にみると、「金融・サービス」、「情報通信」、「製造・建設」の課題感が強くなっています。具体的な課題の状況をみると、課題の上位は「モチベーションの低さ」、「パフォーマンスの低さ」、「マネジメントの困難さ」となっています(図表1)。5〜10年後の課題の上位は、「70歳までの就 改正高年齢者雇用安定法の施行により、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となりました。就業期間の延伸により、シニア人材に対するマネジメントは今後ますます重要になるといえそうです。そこで本稿では、パーソル総合研究所が行った「企業のシニア人材マネジメントに関する実態調査」を元に、企業におけるシニア人材マネジメントの実態や課題について、同研究所の石橋誉氏に解説していただきました。(編集部)企業のシニア人材マネジメントに関する実態調査パーソル総合研究所 ヒューマンアセットコンサルティング部 シニアマネジャー 石橋 誉ほまれ

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