エルダー2021年5月号
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エルダー57岩いわ出で 誠まこと 著/講談社/1540円ミツコ 著/すばる舎/1430円童どう門もん冬ふゆ二じ 著/PHP研究所/1760円本誌の長期連載「江戸から東京へ」で、歴史に学ぶ高齢者の生き方・働き方を綴っている童門冬二氏の最新作。本書は、江戸時代の日ひゅう向がの国くに(宮崎県)にあった高たか鍋なべ藩七代藩主・秋あき月づき種たね茂しげ(鶴かく山ざん)の存在と事績を描いた歴史小説。同時に、もう一つの側面として、「日本の小説ジャンルにあまり例をみない、『自治体小説』として読んでいただきたい」と著者はあとがきに記している。かつて東京都庁に勤めていた著者が歴史小説の題材に選んでいるのは、「愛民」の姿勢で地域活性化に努力した人物だという。その代表にあげられるのが上杉鷹よう山ざんだ。本書の主人公秋月種茂は、鷹山の実兄であり、人を大事にして「下か意い上じょう達たつ」の組織をつくり、世界初とされる児童手当の支給や理想的な藩校の創設などを実践し、「私の知識と才覚は到底兄に及ぶものではない」と鷹山に言わしめた名君であるという。この小説では種茂を中心にして、補佐層の学者役人、現場など各職層の「果たすべき責務」についてもスポットをあてている。「微笑みを以って正義を行う」。著者がこのように評する種茂の姿勢や行動に心を動かされ、時代を超えて会いに行きたくなる。老後の生活に「不安がない」といえる人は少ないだろう。「自分の明るい老後が想像できる」という人も多くはないかもしれない。しかし、本書を読むと、そんな気分が雲ひとつない青空のように清すが々すがしいものに変わっていく。牧師のミツコさんは、同じく牧師の夫と教会を運営しながら、娘4人を育てた。夫を見送った後は単身で公営住宅に移り住み、暮らしは年金の7万円でやりくり。ひと月の家計の内訳も明かしている。ただ、教会への献金分は、シルバー人材センターの仕事で補う。主任牧師を辞めた後、地元のシルバー人材センターに入会し、1日2時間・週3日働いて、月2〜3万円を得ている。さまざまな仕事のなかから子育て中の共働き家庭の掃除や夕飯をつくる仕事を引き受け、「サポートしてくれて、ありがとう」という言葉や、通っているうちに仲よくなったお子さんたちからもらった手紙が宝物だという。仕事が日々の張り合いになり、体を動かして働くと若さも元気も保てるので、「とてもありがたく思う」と実感しているミツコさん。感謝と清貧とともにある、ミツコさんの明るい生涯現役の毎日が美しく、輝いている。実現不可能な業務を上司に強要されたらどう対応すべきか。時差通勤を希望したいが会社は認めてくれるだろうか。長時間労働、ハラスメント、雇止め、労災に直面したら……。本書は、職場で生じる労働にまつわる疑問を取り上げて、解決する糸口となるよう「あなたを守ってくれる法律」を、わかりやすい文章とイラストで解説。トラブルや悩みに関連する、実際の事件の裁判例も多数紹介している。例えば、定年後の再雇用では、「まったく違う職種への再雇用は違法」とする裁判例などを紹介している。ほかにも、アルバイトやパートタイマーの権利、コロナ禍を理由とする雇止め、コロナ禍における派遣社員のテレワークの扱いなども取り上げている。著者は、弁護士として40年以上にわたり、数多くの労働問題を扱い、多くの労働者の声にも耳を傾けてきた労働関連事案のエキスパート。その経験をふまえて、働く人が不利にならないように知っておくべき法律を取り上げている。「こんなときどうする?」、「弁護士からひと言」などのコラムも充実しており、困ったときの相談窓口や相談方法も紹介している。人事労務担当者が基礎知識を復習するときも役立つだろう。小説 秋月鶴山上杉鷹山がもっとも尊敬した兄74歳、ないのはお金だけ。あとは全部そろってる働く人を守る! 職場六法「微笑みを以って正義を行う」名君を描くシルバー人材センターの仕事が張り合いに。明るい「ひとり老後」を伝える働く人が知っておきたい法律ガイド

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