エルダー2021年5月号
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2021.54株式会社ファンケル 上席執行役員・管理本部長永坂順二さん永坂 創業当初から男女差別のない社風を築いてきましたし、毎年100人程度が出産・育児休暇を取得し、年間延べ200〜300人の短時間勤務者がいる会社です。育休後の復帰率は100%ですし、休業していたからこそ会社に戻ったらますます貢献したいという女性が多いです。「時短勤務ではなくフルで働きます。なんでもいってください」という積極的な女性もいます。また、子育ても終わり、職場でも活躍している50代の先輩女性社員もたくさんいますから、若い女性社員にとって、自分たちも将来はそうやって働けるという安心感をいだけるようです。ちなみに課長以上の女性管理職の割合は47%ですが、30代の子育て中の女性課長や短時間勤務の課長もめずらしくありません。―年齢上限なしの「アクティブシニア社員制度」に加えて、70歳定年も視野に入れているということですが、今後の課題として考えていることはありますか。永坂 課題としては、やはり働く人たちの意識も変えてもらわないといけませんし、本人の意識づけを含めた教育・研修のあり方を検討しています。実は昨年から、定年延長を契機に55歳以上を対象にした「セカンドキャリア研修」を始めました。これまでの自分の仕事や働き方を含めてふり返り、仕事の棚卸しをして、今後どうしていくのかを一緒になって考える研修です。―80歳まで働くとしたら、50歳は折り返し地点ですね。永坂 そうです。いままで働いてきた30年と同じ年数を働くことになります。期待される役割も変わりますし、若手の育成も大切です。自分が会社にどういう貢献ができるのかを考えてもらいたい。また、われわれとしても長く働き、会社に貢献してもらうには、一つの仕事しか知らない人を雇用し続けるのは無理があると考えています。本人にとっても不幸ですし、会社にとっても不幸です。もっと若いときからキャリアプランを用意し、複数の仕事を覚えてもらうような育成の方法も検討していかなければいけないと思っています。―65歳定年制の導入や70歳までの雇用に二の足をふむ企業もあります。そうした企業にアドバイスはありますか。永坂 いまの時代に「高齢者」という括くくりで社員を見るのはやめたほうがよいと思います。例えば、59歳と60歳で働き方が変わるかといえばなにも変わりません。また、そもそも「人はみな違ってあたり前」というのが当社のダイバーシティのスローガンですが、会社としてはその人に合った働き方をしてもらい、その人に見合った賃金を払えばよいのです。何もずっと同じ賃金を払えということではありません。何よりも雇用を継続することに意味があると思っています。いままで数十年も会社のために貢献してくれた人に、元気なうちはずっと働いてもらうことにまったく違和感はありません。若い世代も働けるうちはいつまでも働きたいといってくれていますし、そうすることで会社と社員の信頼関係にもつながっていくと考えています。今後は社員の意識の変化も必要定年延長を機にセカンドキャリア研修を開始(聞き手・文/溝上憲文 撮影/中岡泰博)

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