エルダー2021年5月号
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2021.562るわれわれの遺伝子や特性は危険に囲まれていた20万年前から変化していないからなのです。日本人は欧米などの人々と比べて、遺伝的に心配性の傾向があるとする説もあります。また心と身体は実は一体であり、働き方や生活習慣、コンディションが変化すればストレスの感じ方やメンタルヘルスに影響します。さらに人間は集団で暮らす猿の仲間ですから、孤独に生きることはきわめて不得意なのです。その証拠に、失業やそれにともなう経済的な困窮は自殺のリスクであることや、孤独に暮らす人は寿命が短くなる傾向が指摘されています。働く人による対処と職場の対策の基本図表3に、厚生労働省による職場のメンタルヘルス対策の根拠とされる「職業性ストレスモ職場のストレス要因●テレワークなど 労働環境の変化●役割上の葛藤や不明確さ●人間関係における問題●仕事の将来の不安定さ●裁量や自由度の不足●重すぎる負荷や変動●部下や同僚への責任●能力の活用が不十分●仕事上の要求の厳しさ●勤務体制の変化仕事以外のストレス要因家庭や家族内の不安やストレス緩衝要因周囲からのサポート上司、同僚、家族から個人的要因年齢・性別/結婚の状況/雇用の状況/職位/タイプA性格※/自己評価急性の反応心理的なもの●仕事への不満●抑うつ生理的なもの●身体の症状行動面のもの●事故●病気による欠勤医師が診断しうる病気身体の病気(心身症)メンタルヘルス不調取り得る対処・対策❺●産業医・保健師などによる 相談対応●管理職と人事部門との連携●職場復帰支援プログラムの実践取り得る対処・対策❸●プライバシーに配慮した 個人的な相談ごとへの 慎重な対応と支援取り得る対処・対策❹●職場のコミュニケーションの促進●ストレスチェック実施後の 職場環境改善活動の活用取り得る対処・対策❶●テレワークなどの準備と サポート●時間管理・業務管理●非常時という共通認識の共有取り得る対処・対策❷●雇用の確保措置●労使間の対話※筆者作成※  タイプA性格……アメリカでは競争を好み攻撃的な野心家のタイプですが、日本では仕事に埋没する過剰適応型と考えられ、いずれも心身の病気になりやすい、とされています。図表3 職業性ストレスモデルに基づくコロナ禍の不安やストレスへの対処・対策※筆者作成図表2  不安やストレスが引き起こす事象● 不安などを引き金とするメンタルヘルス不調● ストレスにともなう身体的な病気の発生や悪化● 特に高年齢で働く人の心身の機能低下● 一人ひとりと職場の生産性・創造性の低下● パワハラやセクハラなどのリスク事象の発生

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