エルダー2021年6月号
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2021.68いうやり方がある」と自分の経験から解決策を提案する場面は、職場のそこここであふれているのではないでしょうか?ある企業の例です。オフィスで若手技術者数人が右往左往していました。ある課題を技術的に解決できず困り果て、集まって話し合っていたそうです。その話を通りがかりに耳にしたシニア技術者が、「それって、○○をチェックしてみたらいいんじゃないの?」と一言。若手が○○をチェックすると、解決策が見えてきたといいます。若手技術者も、「いわれてみれば」という視点だったそうですが、ぱっと思いつくのが経験豊富なシニアの強みです。ベテランの頭のなかには、知識が関連し合って収まっているようなもので、一つのことを聞くと、あれもこれもと一瞬で多方向に想像ができ、解決策のポイントが見つかりやすいのでしょう。〈人脈〉経験が長い分、幅広く人脈を築いているのもシニアの特徴です。「困ったことがあった」、「だれかに相談したい」と若手にいわれると、「あ、それなら、□□さんが知っているかも」、「そのことなら、××さんに聞いてみるとよい」と社内外のつてを紹介してくれ、若手につなぐといった行動もとりやすくなります。ただ、人脈があることを自分からいう機会もないので、シニアに相談されないケースも多いのではないかと想像します。若手は、人脈を探したい場合は、自分でがんばってつてをたどるのももちろんよいのですが(いまは、SNSなどで人と人とがつながりやすい時代ではあります)、一度、シニアに「こういうことに詳しい人を知らないか」とか具体的に「△△さんを知りませんか?」と相談してみるのもおすすめです。案外、「若いころ、一緒に仕事をしたことがある」といったことでつながっていたりするものです。〈胆たん力りょく〉胆力があることもシニアの強みです。いまのシニアは、働き方改革という言葉もなければ、ハラスメントという考え方もない時代から働いています。長時間労働もあたり前だったり、上司や顧客からの厳しい注文にも耐えてきたという経験があったりして(これが、よいことだとはもちろん思いませんが)、「たいていのことは乗り越えてきた」という自負があります。そのため、トラブルや何かたいへんなことが起こったときでも、落ち着いて堂々としていられます。トラブルが起こったとき、さまざまな荒波を乗り越えてきたシニアであれば、「こういうときは、まずこれをして、あれをして、さらにこの人と話して、こうすればよいだろう」と道筋が見えるはず。ある企業で聞いた話です。クライアントからのクレームに若いリーダーたちが初期対応でミスをし、火に油を注ぐ結果になったことがありました。その際、「そういうときは、私にいってよ」とシニアが登場。彼がクライアントに出向き、話を聞き、クレームのもとになった出来事を整理し、解決してきました。さらには、新しい案件を持ち帰ってきて、うーん、その件なら○○さんがご存じじゃないかな。連絡先は……多くの人脈を若手につなぐ

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