エルダー2021年6月号
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特集コロナ禍や自然災害に立ち向かう働く高齢者の底力エルダー11企業事例1希望者全員70歳まで働ける制度を整えコンテストで優秀賞を受賞1950(昭和25)年に細ほそ幅はば織おり物もの業※1として創業し、1988年に有限会社化したダイケイは、2009(平成21)年に介護事業に業態を変え、高齢者のデイサービス事業所「笑わ楽ら日び」を開設した。同社が立地する地域は、住民が400人にも満たない地域で、高齢化が進んでいたにもかかわらず介護施設がなく、高齢者が介護サービスを受けるためには、利用のたびに周辺の地域へ出向くか、代々暮らしてきた土地を離れなければならない状況にあった。これが施設開設のきっかけである。開設当初は大おお蔵くら富とみ宏ひろ代表取締役とその母、織物業時代からの職員などの少人数でスタート。2015年に施設を新設し、有料老人ホーム事業を開始した。同社は2019(令和元)年度の高年齢者雇用開発コンテスト(現・高年齢者活躍企業コンテスト)で(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰優秀賞を受賞している。事業所が豪雪地帯の山中に位置することもあり、開設当初は若手職員の人材確保が困難で、必然的に高齢職員の活用に舵を切ったという。地元で就労を希望する高齢者は多く、年齢や雇用形態にこだわらずに人材を確保し、高齢職員が活き活き働ける職場づくりに取り組んできた。かつての制度では定年60歳、定年以降はパートタイム職員に移行していたが、介護事業がスタートしたころには、実態として60歳を超えても正規職員として働くケースが多くなっていたことから、定年年齢を2014年に60歳から65歳に延長。同時に希望者全員を70歳まで雇用する継続雇用制度も整えた。同社では、高齢職員を戦力として活用するため、家族の介護が必要な場合など職員の家庭の状況などに応じて、柔軟に働ける勤務体制を整え、短時間勤務などの希望も受け入れている。現在の建物を新築する際には、施設全体の設計に職員の意見を積極的に取り入れ、調理の負担を軽減するため厨房に「スチームコンベクション※2」を導入。浴室は介護職の身体的負担を軽減するため、椅子型の介護入浴用リフトを採用した。介護業務には高齢職員にとって身体的負担が大きい作業があるため、職員をグループ分けし、高齢職員には身体負荷の高い業務を免除し、代替の作業を任せるようにしている。有限会社ダイケイ(福井県坂井市) ●送迎ドライバー 藤ふじ野の隆たか文ふみさん●コロナ禍で感染予防対策に追われる職員を高齢職員が下支え※1 細幅織物業…… 主に綿糸や絹糸、麻糸、合成繊維などで、幅13.0cm未満の細幅織物を製造する事業※2 スチームコンベクション……スチーム(水蒸気)と温風を用いて調理を行うオーブン

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