エルダー2021年6月号
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2021.618してくれてありがとう。心強いです」と喜ばれた。親身な対応は、心のケアにもなったようだ。避難所での炊出しは3〜4カ月続けた。ボランティアと協力し、持っていった卵でたまご丼をつくるなど、苦しい避難生活を送る人々のためにできるかぎりのことをした。なかなかできることではないが、「『コッコファームさんが来てくれた!』といっていただけて、逆にこちらが元気をもらえました」と前田さん。地域のため、お客さまのためという気持ちが力になっている。自分自身のやりがいに加え他者のため、後進のために取り組む困難を乗り越え、前向きに取り組んできたみなさんに、現在の仕事に対する思いについてうかがった。「やはり働いていることで元気でいられますので、会社に望んでいただけるかぎりお仕事を続けていきたいと思っています。若いころは、どうしても自分のことばかり考えがちですが、年齢を重ねてくると、気持ちの余裕が出てきて、みんなのよき理解者でいたいと思うし、よき相談役でもいたいと思うようになりました。かといって、受け身でいるだけでなく、年齢を重ねても新しいことにチャレンジしたいという気持ちもあります。仕事を楽しみながら、どんどんいろいろなことをやっていきたいと思っています」(前田さん)「働くことが、自分にとって一番の活力です。そのなかで、若い人とも年配の人ともコミュニケーションを取りながら、相手を成長させたり、自分もよい刺激を受けたりしていく―働くことの意義というのは、収入だけでなく、そういうところにあるのかなと思います」(竹本さん)「私は(継続雇用期間が終了する)70歳も近いので、生産者とのパイプ役になれる人材を育てていきたいと思っています。この職場には、チャレンジ精神旺盛な人が大勢います。ただ、生産者の方は人生経験の豊富な社長さんなので、未熟なままではよいおつき合いはできません。いまの若い人のなかには、農家のことをよく知らない人もいます。そうしたむずかしさはありますが、しっかりと育てていきたいですね」(藤坂さん)コロナ禍では、感染対策を徹底し安心して来店できる店づくりに邁進熊本地震の発生から5年。地震で大きな被害を受けた熊本城天守閣の復旧工事が今春に終了した。まさに復興のシンボルといえるが、インフラ整備など復旧・復興が進む一方、特に被害が甚大だった益まし城き町などでは、いまも仮設住宅で暮らす人々がいる。避難者の多くが日常を取り戻しつつあるが、被災者の生活再建はまだ道半ばだ。そんななか今回のコロナ禍が起きた。物産館は、一時的に来店客が減ったものの、家庭で料理をする機会が増えたことで客足は戻ってきた。一方、レストランは、入店を制限しており、売上げを落としている。いずれにしても多くの人が訪れるので、対応マニュアルを作成し、感染防止に努めながら営業している。前田さんは、「『地震があったから、コロナ禍だからダメ』という考え方はしたくないと思っています。現実は現実として受け入れ、そのなかでお客さまのために何ができるかをわれわれは考えます」と前向きだ。取材時点では熊本県内の新規感染者数は落ち着いてきているが、変異株が出現するなど、まだまだ新型コロナウイルス感染症の終息は見えない。同社は、引き続き気を引き締め、何があっても対応できる対策づくりに努める方針だ。新型コロナウイルス感染症と地震とはまったく別物ではあるが、あの熊本地震を乗り越えてきた同社なら、ベテラン従業員と若手が力を合わせてコロナ禍も乗り切れるに違いない。

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