エルダー2021年6月号
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特集コロナ禍や自然災害に立ち向かう働く高齢者の底力エルダー19企業事例3西日本豪雨で本社が被災しながらも地域建設業として復旧・復興に協力2018(平成30)年6月28日から7月8日にかけて西日本を中心に全国の広い範囲で発生した「平成30年7月豪雨(通称、西日本豪雨)」は、多くの地域で河川の氾濫や浸水害、土砂災害を引き起こした。死者200人を超える甚大な被害をもたらし、「平成最悪の水害」といわれたことは記憶に新しい。なかでも被害が大きかったのが、岡山県倉敷市真ま備び町ちょうだ。同町を流れる小田川(高たか梁はし川水系)などが決壊、広範囲が冠水し、多くの犠牲者を出した。その真備町に本社を構え、自社も被災しながらも、地元の建設会社としていち早く地域の復旧にあたり、人々の命と暮らしを守るために尽力したのが、株式会社カザケンである。同社は1963(昭和38)年創業。地域密着型の総合建設業として、国・自治体の発注工事や民間の建設工事を請け負い、施工管理を行っている。施工管理というのは、現場監督の仕事をイメージするとわかりやすい。重機を動かしたり穴を掘ったりといった作業は外注し、同社は、現場で働く人の安全管理や、工事のスケジュールなどの工程管理、予算や支払いなどの原価管理などを行う。総そう社じゃ市にある総社支店に工務部を置き、岡山県内のほか、高知県にも支店を展開している。従業員数は70人で、平均年齢は55歳。60歳以上の従業員は約20人である。若い社員もいるが、業界の特性として、他業種と比べると平均年齢は高い。同社は定年年齢を2年ほど前に70歳に引き上げた。定年後は、希望者を最長75歳まで再雇用する。また、会社として残ってほしい人材は、それ以降も個別に継続雇用する。人対人のやり取りや若手の教育、非常時の対応などの役割をになう同社で働く三宅生久さんは現在73歳。以前は全国展開する建設会社に勤め、関東から九州までさまざまな地域で道路の建設などにたずさわってきたが、両親が高齢になってきたことから、12年前に故郷である岡山県に戻り、同社に入社した。土木部で活躍し、現在は顧問を務める。「私が社会に出たころは多くの会社が55歳定年でしたが、いまは長く勤めさせていただけるようになりました。働いていると気を張っていますから、元気も出ますよ」と三宅さんは笑う。株式会社カザケン(岡山県倉敷市) ●顧問 三宅生いく久ひささん●建設会社社員として西日本豪雨からの復旧に尽力モットーは「目配り、気配り、心配り」

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