エルダー2021年6月号
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特集コロナ禍や自然災害に立ち向かう働く高齢者の底力エルダー23企業事例4東日本大震災から10年甦る風景岩手県で最も南に位置する町・陸前高田の復旧・復興のシンボルといえば「奇跡の一本松」である。白砂青松で知られる高田松原は約7万本の松を誇り、市民はもとより県内外から観光客が後を絶たない憩いの場であった。その歴史は古く約350年前に先人が植林を始めたことが書物に残っている。見事な松林は1940(昭和15)年に国の名勝に、1964年には陸中海岸国立公園(現・三陸復興国立公園)に指定された。2011(平成23)年3月11日の大津波によって7万本の松は壊滅的な打撃を受けるが、そのなかでたった一本の松が生き残った。文字通り「奇跡の一本松」と呼ばれるようになり市民の精神的支柱の役割を果たしたが、翌年5月に枯死が確認されたため、モニュメントとして保存されることになった。2019(令和元)年には「高田松原津波復興祈念公園」が開園、公園エリアには「奇跡の一本松」とともに「東日本大震災津波伝承館」が開館し、津波の記憶を風化させない取組みが進められている。陸前高田のもう一つの復旧・復興のシンボル、市の新庁舎が2021年4月に完成した。旧庁舎は東日本大震災によって発生した大津波で全壊、2カ月後には仮設庁舎で業務が再開され、不便な状態で市民サービスを行ってきたが、大震災から10年目の節目に再建された。7階の展望ロビーからは中心市街地を一望できる。シンボルともいえる新庁舎の完成をきっかけに、陸前高田の町は少しずつ変容を遂げている。もちろん本当の意味での復旧・復興はまだまだ時間を要するが、陸前高田の町をこよなく愛する人たちが全力でかつての風景を取り戻そうとしている。2021年3月31日時点で、陸前高田の行方不明者は202人、10年という歳月が流れてもいまなお大切な人を失った悲しみは癒えない。それでも、中心地に図書館が移設され、文化ホールも新設、さらには間もなく市立博物館が開館するなど、急ピッチで未来へ向かう町づくりが進んでいる。ハレの日のための上質な空間キャピタルホテル1000震災から2年後の秋、陸前高田の町を一望できる高台にキャピタルホテル1000がグランキャピタルホテル1000株式会社(岩手県陸前高田市) ●調理補助 松田千恵子さん●東日本大震災大津波の被害に遭い閉館再建を果たしたホテルで高齢従業員が温かくもてなす

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