エルダー2021年6月号
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ています。この前提と同一労働同一賃金のことをふまえると、賃金減額の提案自体が禁止されているわけではありませんが、合理的な裁量の範囲の条件の内容が問題となります。同一労働同一賃金に関する裁判例について2前回もご紹介した通り、定年退職後の再雇用に関して同一労働同一賃金が争われた事件として、長澤運輸事件(最高裁二小 平30・6・ 1判決)があります。この事件において、判決では、旧労働契約法第20条が考慮することとされている「その他の事情」として、〝定年後の再雇用であること〞を考慮していました。その後にあらわれた裁判例として、名古屋地裁令和2年10月28日判決があります。事案の概要は、以下の通りです。自動車学校を経営する会社に勤めていた原定年後再雇用時の労働条件について1前号では、最高裁判決などをもとに、定年後再雇用における、賃金の減額に関する判断の枠組みなどをお伝えしました。今回は、具体的な判断を行った裁判例の紹介を通じて、留意点を整理してみたいと思います。まず、前提として、定年後に再雇用を行う場合、厚生労働省は、合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、高年齢者雇用安定法の違反にはならないとの見解を公表しています。そして、継続雇用をしないことができるのは、解雇事由または退職事由と同一の範囲に限定されています(「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」参照)。同指針では継続雇用後の賃金について、高齢者の就業の実態、生活の安定等を考慮し、適切なものとなるよう努めるという方針も示され賃金の減額の提案自体は、許容されるものと考えられます。減額の程度については、60%を下回らない程度にすべきと判断した裁判例があります。A第37回 定年後再雇用の労働条件、競業避止義務と引き抜き行為弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。2021.644知っておきたい労働法 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制はA 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制はA& 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は&Q定年後再雇用する従業員の賃金と同一労働同一賃金の関係について詳しく知りたい定年後に再雇用する従業員の賃金を減額する提案をしてもよいのでしょうか。同一労働同一賃金の観点からどの程度であれば許容されるのでしょうか。Q1

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