エルダー2021年6月号
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エルダー49活動事例NPO法法人生涯現役で働きたい人のための中古パソコン再生寄贈事業に取り組む設立から20年強の実績を持つイー・エルダーのメイン事業は、中古パソコンを再生して寄贈する活動である。この事業は、鈴木理事長がIBMの社会貢献担当部長を務めていたときの経験が起点となっている。当時、まだたいへん高価だったパソコンを寄贈してほしいという要望が多数の団体からIBMに寄せられていた。また、IT業界ではそのころ「2000年問題※」が話題となり、2000年問題に対応していないパソコンが大量に廃棄されようとしていた。このことから鈴木理事長は、廃棄されるパソコンを再生し、活かすことに着目。そこに、知恵も人脈も経験も豊富なOBの力を活かす仕組みを構築することを考えて、格好の人材が揃っているイー・エルダーで「中古パソコン再生寄贈事業」をスタートしたのである。この事業は、IBMをはじめとした複数の企業から資金的・技術的協力を受け、廃棄処分されるパソコンを無償で提供してもらい、同時に、再生のために必要な経費を負担してもらう。当初は、再生のための作業をいくつかの障害者が働く団体や企業に委託し、イー・エルダーの会員の指導のもとで、修理や清掃、ソフトの入れ替えなどを行い、必要な経費を支払い、再生されたパソコンを、社会福祉団体や教育機関などに寄贈した。企業が負担する再生のための経費から再生する団体に支払う経費を除いたものが自分たちの活動の対価として、イー・エルダーの収入になる。この事業によって、パソコン(資源)の有効活用と障害者の就業機会をつくることに貢献することができる。鈴木理事長は事業開始にあたり、自らがつちかってきた人脈から、「一社一社に足を運んで、この事業の意義を説明して理解を得ることに努め、共鳴していただける企業とおつき合いしてきました。そして、名だたる企業に協力していただくことができました」と20年前をふり返った。再生したパソコンの寄贈台数は、事業を開始した2001(平成13)年は483団体に1025台を、2002年には731団体に2011台を、2003年には808団体に3050台を贈り、最盛期の2006年には738団体に3105台を寄贈した。2011年6月から2012年12月までの1年6カ月間は、東日本大震災で被災した非営利団体や障害者の方々などへの支援として贈った。ここ数年は企業からの中古パソコンの調達がむずかしくなり、残念ながらこの事業は現在縮小しているが、再生パソコンの需要は根強く、規模は小さくなったものの、再生のための作業を専門企業に委託して、事業を継続している。2020年までの全実績をみると、5640団体に1万9701台を贈っている。IT関連の講座や研修の講師として活躍イー・エルダーで取り組んでいるもう一つの中核的な事業が、「e-ネット安心講座」である。※ 2000年問題…… 2000年になるとコンピュータが誤作動する可能性があるとされた問題鈴木政孝理事長(左)と寺島春夫専務理事(右)

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