エルダー2021年6月号
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株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2021.652今回は「健康経営」について取り上げます。文字をみただけでは、これが人事用語なのか疑問を持たれるかもしれませんが、従業員の働きやすさや人材の活躍にもかかわり、人事担当者にはぜひ知っていただきたい用語です。健康経営とはなにかまずは、健康経営の定義から確認したいと思います。健康経営の推進役である経済産業省ヘルスケア産業課の『健康経営の推進について』(2020(令和2)年)という資料には「健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取組みが、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」と記載されています。そして健康経営の推進のための具体的な取組みを投資ととらえ、その投資が従業員の活力向上や生産性の向上につながり、業績や企業価値の向上が期待されるとあります。従業員の健康維持・向上を支援する取組みが企業の成長をうながし、結果として経済成長にもつながるという理念のもと、官民あげての推進事業となり、「健康経営ブーム」と呼ばれる現象もありました。次に、健康経営を推進する背景についてみていきたいと思います。本連載で何度か触れている「少子高齢化」と「働き方」にも大きくかかわっています。少子高齢化による経済的な影響の大きなものは労働力人口の減少です。若年人口の増大期には高齢者は一定年齢で引退し、若年層を労働者として取り入れればこと足りました。労働力人口の減少が止められない現在では、若年労働者のみに焦点をあてるのではなく、年齢に関係なく就業できる環境を整備したほうが、企業としても社会としても効果的な状況になっています。また働き方については、長時間労働や職場内でのハラスメントの発生などにより従業員が肉体的・精神的な健康を損ない、業務効率の低下、休職や退職となる事例が後を絶ちません。度重なると業務の生産性や人件費コストといった経営的な指標に直接的な悪影響を及ぼすことになります。これらの課題の有効な解決策の一つが、従業員の健康の維持・向上からもたらされる従業員一人ひとりの活躍と、結果としての生産性の向上ととらえられていることが健康経営の推進の背景にあるといえます。健康経営の推進・取組み状況さて、先ほど官民あげての推進事業と書きましたが、各々の取組み状況についてみていきましょう。「健康経営」第13回

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