エルダー2021年6月号
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■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー53①行政としての取組み優良な健康経営に取り組んでいる法人を表彰することで事例をつくり、健康経営に取り組みやすい環境を整えることに力を入れています。もっとも有名なのは「健康経営優良法人認定制度」でしょう。大規模法人と中小規模法人別に定められている認定要件を満たした企業に対して、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人として認定しています。なかでも、上位500位に入る法人を大規模法人部門は「ホワイト500」、中小規模法人部門は「ブライト500」として認定しています。健康経営優良法人に認定されると、認定法人名が公表され、認定された証であるロゴを使用して広報活動ができるなど、法人側にもメリットがあります。また、東京証券取引所の上場企業のなかから、健康経営に優れた企業を選定した「健康経営銘柄」という認定もあります。これは長期的な視点からの企業価値の向上を重視する投資家に対して、魅力のある企業として紹介することで健康経営の取組みを促進することを目的としています。認定状況は、2021年の大規模法人は1801法人、中小規模法人は7934法人、健康経営銘柄は29業種48法人となっています。②企業としての取組み企業としての取組み状況については、まだ十分ではない状況です。少しさかのぼりますが、東京商工会議所が2019(平成31)年に発表した「健康経営に関する実態調査 調査結果」によると、健康経営の内容を知っている企業が29・0%、現在実践している企業が20・8%といった状況です。ただし、いずれは実践したいという回答が54・3%あり、健康経営の実践課題の回答のトップが、どのようなことをしたらよいかわからない45・5%というところをみると、必要性は理解しているが具体策がわからない層が一定数いると想定されます。一般的にも、健康診断の受診率向上や禁煙の推進くらいしか思いつかないという声も聞こえてきます。これに対して参考になるのが、一つは健康経営優良法人の認定要件です。実際にご参照いただくとわかりますが、「経営理念(経営者の自覚)」、「組織体制」、「制度・施策実行」、「評価・改善」、「法令遵守・リスクマネジメント(自主申告)」という五つの大項目で区分されており、そのなかで評価項目としてどのようなテーマに取り組むべきかにブレイクダウンされています。自社の取組みの実態把握のためのチェックリストとして活用することができます。より具体的な取組み事例については、『健康経営ハンドブック2018』(経済産業省・東京商工会議所)や、『健康経営優良法人 取り組み事例集』(経済産業省・2020年)あたりが、企業名や取組み内容、効果とともに写真も掲載されており、わかりやすいと思います。また、地域ごとに行われている健康経営へのインセンティブや、認定・登録・表彰制度についても記載があります。これらの認定や表彰などを目標におくことも、自社内の健康経営への取組みを実際に促進するために有効と考えられます。高齢者雇用の観点からも、健康経営は重要な取組みです。特に、本年(2021年)4月1日からの「改正高年齢者雇用安定法」施行により、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となりました。個人差はありますが、60歳を超えて体力・気力が維持できない、または健康状態の悪化により就業に支障をきたすケースは少なくありません。中長期的な視野に立って健康経営を推進し、年齢に関係なく活躍できる支援をすることが、雇用延長制度を成功させるポイントになると考えられます。☆  ☆今回は「健康経営」について解説しました。次回は「目標管理制度」について取り上げる予定です。

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