エルダー2021年6月号
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エルダー57深田博史、寺田和正 著/日本規格協会/1100円立たて川かわらく朝ちょう 著/三笠書房/770円重しげ森もり雅まさ嘉よし 著/日科技連出版社/2860円労働災害による死傷者数に占める60歳以上の労働者の割合が増加傾向にある。このため、厚生労働省では2020(令和2)年に「エイジフレンドリーガイドライン」(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)を策定し、対策の強化に乗り出しているところだ。こうした状況のなか、本書は、ヒューマンエラーによって生じる事故を中心に、心理学や認知科学の視点からそのメカニズムと対策を解説した書籍として刊行されたもの。産業安全を専門とする研究者の視点から労働災害の防止につながる成果がまとめられている。例えば、第3章「ヒューマンエラーのメカニズムを考える」では、事故の原因となるヒューマンエラーについて、人の記憶や注意のメカニズムをもとに解説。また、第4章「ヒューマンエラーの防ぎ方を見直す」では、指し差さ呼こ称しょうや危険予知トレーニング(KYT)など、さまざまな産業現場で用いられているヒューマンエラー防止対策のメカニズムやその有効性、欠点などが検証されている。実用書のスタンスとは異なるが、高齢労働者向けの安全衛生対策強化のためのヒントを得たい担当者には、一読の価値があるだろう。昔から「笑いは百ひゃく薬やくの長ちょう」などといわれ、近年ではさまざまな研究や実験により、笑いがもたらす健康効果が明らかになっている。本書においても「笑いは長生きをもたらす」、「笑うと血糖値も下がる」、「笑いが死亡原因の6割の病気を防ぐ」など、笑いの効果とその理由や研究報告が満載だ。さらに、「笑いは心を明るくポジティブにしてくれる」、「お金もかからず副作用もない」、だから「人生、笑わない手はない」とテンポよく話が展開していく。著者は、医学博士であると同時に、真しん打うちの落語家でもある。「笑って健康、笑って長生き」をモットーに、健康教育と落語をミックスした「健康落語」という新ジャンルを開拓し、「笑えて、ためになる」話を日本全国に広めてきた。本書では、なかなか笑えないという人に向けて、「笑うための処しょ方ほう箋せん」も紹介。笑いが笑いを連れてくるので、「よく笑う人のところへ行く」のも一つの手だという。また、自分専用の健康基準によって、どんな状態でも健康な自分を発見することができるという健康論、生き方論にも引き込まれる。残念ながら、著者は5月に急逝したが、本人の落語を聞いているような感覚で読める文章も魅力的な一冊だ。BCP(事業継続計画)とは、大規模災害やパンデミックなどの緊急事態に企業が遭遇し、業務や活動の中断、阻害が生じても、かぎられた経営資源を優先度の高い活動へ効果的に投入し、活動を定めたレベルまで回復させ、業績を継続するための「計画」のことをいう。頻発する自然災害やコロナ禍を念頭において、既存のBCPの見直しを図ったり、新たに策定したりする企業が増えている。本書は、ISOやJISをテーマにした「見るみるISO・JISシリーズ」の5作目で、BCP、BCM(事業継続マネジメント)、事業継続マネジメントシステムの国際規格であるISO22301をテーマとした入門書である。まずBCPやBCMの基本事項を説明したうえで、BCPの「策定、展開」、「実技、点検、改善」、「発動、復旧」と「ISO22301を使って継続的改善」の四つのステップに分けて解説。資料編には、七つの参考事例を掲載している。全体的に簡潔な解説でポイントがつかみやすく、イラストが豊富に使用されているので楽しく読み進めながら、理解していくことができる。現場の実務担当者が社内勉強会などでも活用できる内容である。ヒューマンエラー防止の心理学笑って生きれば、笑って死ねる医学博士にして落語家が語る〝薬を10錠のむ〞より効く、健康寿命をのばす話見るみるBCP・事業継続マネジメント・ISO 22301イラストとワークブックで事業継続計画の策定、運用、復旧、改善の要点を理解労働災害防止対策を一歩進めるための考え方を提示「笑えて、ためになる」健康論、生き方論コロナ禍で注目されるBCPやBCMに関する実務担当者向け入門書

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