エルダー2021年6月号
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2021.64城西大学経営学部 教授 塚本成美さん―70歳就業時代になると、センターの役割にも変化が求められてくるのでしょうか。塚本 おおむね60歳から会員になれますが、現在の平均年齢は74歳で、75歳以上の後期高齢者が約4割を占めています。70歳就業時代になると、その前にセンターに入ろうという人は少ないと思いますし、今後のセンターの役割は70歳過ぎの人が80歳を超えても働き続けることができる組織にしていく必要があります。そのためには組織変革が必要ですが、変わってはいけない部分と変わらなければいけない部分を選り分けることから始めないといけません。大河内先生は、「センターとは、どういう地域をつくりたいのかを高齢者である会員が主体となって考え、実行していく運動体である」といっていますが、これは変わってはいけない理念であり、原点です。一方、変わらなければいけないのは会員の高齢化に合わせた就業環境の整備です。理念に賛同し、子どもや孫と同世代の人たちとともに自分の住んでいる地域の将来を考え、地域をつくっていく。そういう使命感を持った70歳を過ぎた高齢者が地域づくりのにない手の中心となって就業環境を整えていく必要があります。―企業を退職した高齢者が、就業を通して社会や地域と結びついていくために必要な仕組みや課題とは何でしょうか。塚本 企業で働いている間は、住居を移動することもあるため、必ずしも生まれ育ったところにずっと住んでいるわけではありません。そうした人たちに対して、退職してからでもよいですが、できれば退職する前に退職後の生活や地域を知る場を設けてはどうでしょうか。大企業では退職後の過ごし方などについての研修を実施しているところもありますが、ほとんどの企業にはそうした場がありません。自治体と連携して、定年を迎える50代後半以降の人たちを対象にした研修会、あるいは講演会などのイベントを開くのもよいかもしれません。―生涯現役時代に向けて、社会や地域のにない手として有意義な人生を送っていくためのアドバイスをお願いします。塚本 長年企業で働いてきて、退職後に住まいのある地域に溶け込んでいくのはなかなかむずかしいものです。何をすればよいのかわからない場合は、とりあえずセンターの会員になれば仕事を紹介してもらえます。最初は除草作業かもしれませんが、作業をきっかけにコミュニケーションを取りやすくなり、知らない人との出会いの場も生まれ、地域での居場所もつくれます。仕事は目的ではなく、あくまで地域の人たちの集団に入っていくための手段と考えてはどうでしょう。そのうえで私の一番の願いは、自分たちが暮らす地域の将来について考えていただきたいということです。地域でよりよい関係性を築いていくには、いまの状態だけでなく、その地域の30年、50年先の将来のビジョンのようなものを考えていただきたい。自分は年寄りだから将来のことは子どもたちに任せるというのではなく、いわば歴史の結節点をになう中継ぎとしての役割を果たしていただければと思います。高齢者には地域の30年、50年先を見すえて中継ぎとしての役割を果たしてほしい(聞き手・文/溝上憲文 撮影/中岡泰博)

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